20年間で高齢者施設が災害危険区域に激増 「レッドゾーン」に次々と建つ理由 (1/2) 〈AERA〉|AERA dot. (アエラドット)

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20年間で高齢者施設が災害危険区域に激増 「レッドゾーン」に次々と建つ理由

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野村昌二AERA
記録的な豪雨で水没した千寿園の上空。一帯は洪水の恐れがある「洪水浸水想定区域」に指定され、一時は球磨川の支流があふれ、一面が湖のようになった (c)朝日新聞社

記録的な豪雨で水没した千寿園の上空。一帯は洪水の恐れがある「洪水浸水想定区域」に指定され、一時は球磨川の支流があふれ、一面が湖のようになった (c)朝日新聞社

避難確保計画を作成している施設数【1】(AERA 2020年7月27日号より)※※国土交通省「要配慮者利用施設の浸水対策」をもとに編集部で作成。水防法で市町村地域防災計画に位置づけられている要配慮者利用施設の数と、うち避難確保計画を作成した施設の数。2020年1月1日現在

避難確保計画を作成している施設数【1】(AERA 2020年7月27日号より)※※国土交通省「要配慮者利用施設の浸水対策」をもとに編集部で作成。水防法で市町村地域防災計画に位置づけられている要配慮者利用施設の数と、うち避難確保計画を作成した施設の数。2020年1月1日現在

避難確保計画を作成している施設数【2】(AERA 2020年7月27日号より)※※国土交通省「要配慮者利用施設の浸水対策」をもとに編集部で作成。水防法で市町村地域防災計画に位置づけられている要配慮者利用施設の数と、うち避難確保計画を作成した施設の数。2020年1月1日現在

避難確保計画を作成している施設数【2】(AERA 2020年7月27日号より)※※国土交通省「要配慮者利用施設の浸水対策」をもとに編集部で作成。水防法で市町村地域防災計画に位置づけられている要配慮者利用施設の数と、うち避難確保計画を作成した施設の数。2020年1月1日現在

 九州を中心に列島を襲った集中豪雨。高齢者が犠牲になる悲劇が、また起きた。対策は「待ったなし」だ。AERA 2020年7月27日号では、今回の豪雨被害の背景に迫った。

【表】岩手81%、東京47%…避難確保計画を作成している施設数は? 都道府県別リストはこちら

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 なぜ、14人もの高齢者が亡くなったのか。

 熊本県球磨村の特別養護老人ホーム「千寿園」。玄関前には、花束が手向けられていた。

「今も敷地内には布団やバケツなどが散乱しています。想像を絶する勢いで、川が氾濫したのだと思います」

 球磨村役場の男性職員は言う。

 4日、九州南部を襲った記録的豪雨で球磨川支流が氾濫し、濁流が園をのみ込んだ。

■「避難確保計画」の作成

 近年、集中豪雨や台風によって高齢者施設が被害を受けるケースが全国で相次いでいる。2016年8月、東北地方に上陸した台風の豪雨で、岩手県岩泉町のグループホームが浸水し入居者9人が亡くなった。昨年10月の台風19号では、埼玉県川越市の特養が水害で浸水し、入所者ら約100人が一時孤立した。

 岩泉町の被害を受け、国は17年に水防法を改正。浸水想定区域内にある高齢者施設など要配慮者利用施設に、避難先や移動方法などを定めた「避難確保計画」の作成と「避難訓練」の実施を義務づけた。

 国土交通省が今月8日公表した今年1月時点での避難確保計画の状況は、全国約7万8千施設のうち計画を作成したのは45%の約3万5千施設にとどまる。都道府県別で最も高かったのは岩手県の81.8%、逆に最も低かったのは熊本県の5.4%と76ポイント以上の開きがあった。

 国交省の担当者は言う。

「自治体ごとに温度差がある。21年度末までに100%を目指す」

 だがしかし、避難確保計画を作成すれば悲劇を防げるわけではない。国交省によれば、千寿園は避難確保計画を作成し、避難訓練も年2回実施していたのだ。先の国交省の担当者は言う。

「計画の中身がどういうものだったかまだよくわからない。どのような問題があったか、今後検証していきたい」

 計画や訓練を生かせなかったのは、なぜか──。

 高齢者の避難対策に詳しい同志社大学の立木(たつき)茂雄教授(福祉防災学)は、背景に意思決定の遅れが考えられると話す。

「球磨村では前夜のうちに避難勧告まで発令されましたが、施設はすぐに『逃げる』というアクションを取りませんでした」


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