元朝日新聞記者 稲垣えみ子
元朝日新聞記者 稲垣えみ子
きれいな包装紙は型紙で切り抜き封筒にしてストックしている。今や堂々たる趣味(写真:本人提供)
きれいな包装紙は型紙で切り抜き封筒にしてストックしている。今や堂々たる趣味(写真:本人提供)

 元朝日新聞記者でアフロヘア-がトレードマークの稲垣えみ子さんが「AERA」で連載する「アフロ画報」をお届けします。50歳を過ぎ、思い切って早期退職。新たな生活へと飛び出した日々に起こる出来事から、人とのふれあい、思い出などをつづります。

【写真】稲垣さんはきれいな包装紙は型紙で切り抜き封筒にしてストックしている

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 前回、レジ袋が有料化されようが影響ゼロという話を書いたところ、担当デスクから「私はそうもいかず悩ましいです」と返信がきた。

 なるほどそりゃそうだ。ゴミの量が多けりゃ元も子もない。っていうかそもそもの我らの課題はレジ袋じゃなくて、使い捨てゴミの総量を減らすことであった。うっかり忘れるところでした。それを書かなきゃいけませんね。

 で、私は一般的に「電気を使わない人」として認識されているらしいのだが、実はゴミをほとんど出さない人でもある。今やそのレベルは電気と同様に我ながら尋常ではなく、「燃えるゴミ」は中サイズの袋で1、2カ月に1度、プラゴミは小さなレジ袋に2、3週間に1度という少なさ! しかも実感としてはまだまだ発展途上で、さらに半分にできるという感触がある。

 そのノウハウを説明すると一冊の本レベルになるので大胆に省略するが、確実に言えることは、ゴミを減らせば支出も減るということだ。減らしたくなくても減る。しかも暮らしのレベルは変わらない。っていうか家の中も頭の中も整理されるのでレベルはむしろ急上昇。世の中には難しい投資本が山ほど出回っているが、何よりゴミを減らすことが最も簡単で確実な投資だと私は思うね。

 ま、ここまで大きく出ておいてノウハウを一個も書かないのも何なので、一つだけ重要なポイントをお教えしよう。それは、買い物をするときの判断の基準の最上位に「ゴミを出さない」ってことをドンと置くということだ。「お得」とか「安い」とか「かわいい」とか「便利」とかより何より「ゴミを出さない」ことを前に置く。捨てるしかない包装に包まれていないか、買ったもの自体が早晩ゴミになったりしないか。この基準を満たさなければできるだけ手を出さない。

 これは革命としか言いようのない行動変容である。やってみればわかるが、これだけであらゆる巧妙な宣伝や洗脳から自由となる。ゴミ削減とは現代における、支配からの卒業である。

稲垣えみ子(いながき・えみこ)/1965年生まれ。元朝日新聞記者。超節電生活。近著2冊『アフロえみ子の四季の食卓』(マガジンハウス)、『人生はどこでもドア リヨンの14日間』(東洋経済新報社)を刊行

AERA 2020年7月27日号

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稲垣えみ子

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稲垣えみ子(いながき・えみこ)/1965年生まれ。元朝日新聞記者。超節電生活。近著2冊『アフロえみ子の四季の食卓』(マガジンハウス)、『人生はどこでもドア リヨンの14日間』(東洋経済新報社)を刊行

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