専門家会議が定める解除の基準は前出の直近1週間の感染者数のほか、「重症者が減少傾向にあり、医療体制が逼迫していないこと」「PCR検査のシステムが確立されていて、検査件数が極端に少なくなっていないこと」の三つが中心だ。

 東京医科大学の濱田篤郎教授(渡航医学)はこの基準を評価した上で、千葉・埼玉は宣言を解除してもよかったと話す。

「10万人あたり0.5人は感染経路をしっかり追えていた3月半ばと同水準で、ここまで下がれば解除するという基準は正しいと思います。千葉、埼玉はこの水準を下回り、感染状況は十分に落ち着いている。医療体制、検査体制も整っています。生活圏が一体だからという政府の判断もわかりますが、解除してもよかったのではと思います」

 京都大学大学院経済学研究科の依田高典教授(行動経済学)は、「千葉は解除すべきだった」との立場だ。

「宣言を解除すれば県をまたいだ移動が増え、若干の感染増加はあるかもしれません。しかし、連帯責任のような形で広い範囲の経済を止め続け、営業の自由や行動の自由を制限するのはバランス感覚を欠いています。感染者は抑えられているのにさらに自粛を続けることが、千葉県内でどれだけの損失を生むかも考慮すべきです」(依田教授)

 千葉以外についても、出口戦略にはやや疑問が残るという。

「ゼロリスクにはならないので、解除のタイミングは健康と経済のリスク比較が必要です。今後経済的な損失をどうリカバリーするか。難しい問題です」(同)

(編集部・川口穣)

AERA 2020年6月1日号より抜粋

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川口穣

川口穣

ノンフィクションライター、AERA記者。著書『防災アプリ特務機関NERV 最強の災害情報インフラをつくったホワイトハッカーの10年』(平凡社)で第21回新潮ドキュメント賞候補。宮城県石巻市の災害公営住宅向け無料情報紙「石巻復興きずな新聞」副編集長も務める。

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