緊急事態宣言の解除に先立ち営業を再開した兵庫県西宮市の百貨店「西宮阪急」では、開店と同時に多くの客が店内に入っていった/5月21日午前 (c)朝日新聞社
緊急事態宣言の解除に先立ち営業を再開した兵庫県西宮市の百貨店「西宮阪急」では、開店と同時に多くの客が店内に入っていった/5月21日午前 (c)朝日新聞社
AERA 2020年6月1日号より
AERA 2020年6月1日号より

 大阪などで緊急事態宣言が解除された一方、感染者の少ない千葉や埼玉は解除のタイミングが遅れた。政府の出口戦略は適切だったのか。第2波に備え、AERA 2020年6月1日号では専門家の見解を紹介する。

【8都道府県の10万人当たりの新規感染者の推移はこちら】

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「まだ、続くのか……」

 5月21日、千葉県館山市に住む女性(68)はニュースを聞いてため息をついた。この日、大阪・京都・兵庫の関西圏で緊急事態宣言が解除され、発出が続くのは首都圏の1都3県と北海道だけになった。千葉県は「居残り組」だ。

 千葉県で21日までの1週間で確認された感染者は16人。人口10万人当たり0.26人で、政府の専門家会議が解除の目安として定める「直近1週間の新規感染者の累計が10万人あたり0.5人」を大きく下回る。39県で宣言が解除された14日の段階でもこの基準を下回っていたが、「東京や神奈川と同じ生活圏」という理由で解除が見送られた。

 女性はこう憤る。

「“首都圏は一体”なんて言っても千葉は広いし、東京に行くことはめったにありません。そもそも館山市は今日まで感染者ゼロで近隣を見てもほとんど出ていない。別世界の話に感じる」

 女性の周囲に感染を気にする人はほとんどいないという。街を歩いても、マスクをしていない人が多い。しかし、緊急事態宣言と県が発出している自粛要請の影響で公共施設は閉鎖され、飲食店も休業したり、営業時間を短縮したりしている。

「ずっと通っていたスイミングにも、県の施設でやっていたヨガ教室にも1カ月以上行けず体調を崩しています。なぜ関係ない私たちがとモヤモヤします」

 千葉県の森田健作知事は会見で、「1都3県は経済的にも社会生活においても非常に密接」だとして、緊急事態宣言が解除されないのは妥当だと話したが、県民からは恨みの声が渦巻いている。状況は、感染者数が10万人あたり0.27人にとどまっている埼玉県も同じだ。

 千葉、埼玉の解除見送り。この判断は正しかったのか。

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川口穣

川口穣

ノンフィクションライター、AERA記者。著書『防災アプリ特務機関NERV 最強の災害情報インフラをつくったホワイトハッカーの10年』(平凡社)で第21回新潮ドキュメント賞候補。宮城県石巻市の災害公営住宅向け無料情報紙「石巻復興きずな新聞」副編集長も務める。

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