下園壮太(しもぞの・そうた)/陸上自衛隊衛生学校の心理教官としてメンタルヘルス、耐ストレス教育に携わった後、退官。現在はメンタルレスキュー協会理事長を務める
下園壮太(しもぞの・そうた)/陸上自衛隊衛生学校の心理教官としてメンタルヘルス、耐ストレス教育に携わった後、退官。現在はメンタルレスキュー協会理事長を務める

 新型コロナウイルス感染拡大は、将来不安をはじめさまざまなストレスや不安を生み出している。乗り越えるためには、見えない疲労を自覚することが重要だという。AERA2020年4月27日号は、元自衛隊の心理教官・下園壮太さんに具体的な対処法を聞いた。

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 新型コロナウイルスが本格的に日本に上陸してから約2カ月が経ち、ストレスや不安の種類は多様になっています。

 最初は未知の感染症に対する「恐怖」でした。その後自粛が始まり、「将来不安」が生まれました。そして、感染拡大を防ぐためにstay homeが盛んに言われます。家にいるだけ、楽だと考えがちですが、これまでできたことを我慢するのはエネルギーを使い、見えない疲労(ステルス疲労)がたまっています。「同調圧力」も強くなりました。少しの外出でも白い目で見られる、遊んでいると思われてはいけない──。そう感じる人は多い。社会を覆う不安はピークに達しています。

 乗り越えるにはまず現状を自覚する。異変はなくても疲れている。みんなストレスをためている。これを理解すればイライラが少し収まり、他人や自分に優しくなれます。

 情報の制御も必要です。不安な情報は甘いお菓子と一緒で、いくらでも欲しくなる。でも、同じニュースを何度も見るのは「摂りすぎ」です。

 不安が強いときは意識をそらす時間をつくりましょう。読書でもゲームでも、好きなことに夢中になり熱中することで、必要以上の不安を抱えなくなります。そしてよく休むこと。「ステルス疲労」は気づかぬうちに体を蝕みます。意識して普段より1時間長く寝てください。昼寝でも、横になるだけでも構いません。

 緊急事態宣言が出たことで不安を強めた方もいるかもしれませんが、宣言が出たことでリスクは下がるんです。自粛要請さえ守れば、過剰に怖がる必要はない。粛々とコロナ禍を乗り越えましょう。

(編集部・川口穣、ライター・井上有紀子)

AERA 2020年4月27日号

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川口穣

川口穣

ノンフィクションライター、AERA記者。著書『防災アプリ特務機関NERV 最強の災害情報インフラをつくったホワイトハッカーの10年』(平凡社)で第21回新潮ドキュメント賞候補。宮城県石巻市の災害公営住宅向け無料情報紙「石巻復興きずな新聞」副編集長も務める。

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