普段は会社員らでにぎわう新橋駅前から人が消えた。ロックダウンに身構える東京だが、すでに影響は目に見える形に (撮影/小山幸佑)
普段は会社員らでにぎわう新橋駅前から人が消えた。ロックダウンに身構える東京だが、すでに影響は目に見える形に (撮影/小山幸佑)

 欧米で急激に死者を増やす新型コロナウイルス。日本でも同様の感染爆発が起きるかどうかの瀬戸際だ。明暗を分ける「関ケ原」となるのは、首都・東京。首都封鎖はすべきなのか。AERA2020年4月13日号は「新型ウイルス」を特集する。

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 小池百合子東京都知事が「感染爆発の重大局面」と訴え、外出自粛を呼び掛けた週末から一夜明けた3月30日。都内12の感染症指定医療機関の一つ、国立国際医療研究センター(東京都新宿区)の外来には40人を超える患者が新型コロナウイルスの検査を求めて詰めかけた。

「キャパシティーを超える対応を続けながら、何とか医療を回している状況です」

 最前線で治療にあたる大曲(おおまがり)貴夫・国際感染症センター長(48)は切迫感をにじませた。

 都は患者の爆発的急増を意味する「オーバーシュート」に備え、4千床の病床を整備する方針を打ち出した。このうち、指定医療機関で確保できる病床は118床とされている。

 しかし、国立国際医療研究センターでは規定の4床に加え、結核病床に指定されていた病棟を活用し、既に20人余の患者を収容しているという。大曲氏はこう訴える。

「都内では『新型ウイルスの患者は対応しない』という一般病院もあり、患者がたらい回しされる状況も起きています。しかし、これ以上指定医療機関に負担が集中するのは限界です。余力のある医療機関に協力してもらうことができれば、4千床はすぐに確保できるはず。早く分担してもらいたい」

 東京でオーバーシュートが起きる可能性について大曲氏は「全く予断を許さない」と慎重に言葉を選ぶ。ただ、最悪のペースをたどった場合、どのような事態を想定しているのかと問うと、眼前に迫る危機を淡々と語った。

「海外の悪夢のような医療崩壊のシーンが、東京でも再現されるのだと思います」

 集中治療室(ICU)がどんどん重症者で埋まり、人工呼吸器があっという間に不足する。屋外の公園や体育館に簡易ベッドを並べるが、医療スタッフが足りず最低限の措置しかできない……という事態だ。

 本当に東京でオーバーシュートは起きるのか。

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渡辺豪

渡辺豪

ニュース週刊誌『AERA』記者。毎日新聞、沖縄タイムス記者を経てフリー。著書に『「アメとムチ」の構図~普天間移設の内幕~』(第14回平和・協同ジャーナリスト基金奨励賞)、『波よ鎮まれ~尖閣への視座~』(第13回石橋湛山記念早稲田ジャーナリズム大賞)など。毎日新聞で「沖縄論壇時評」を連載中(2017年~)。沖縄論考サイトOKIRON/オキロンのコア・エディター。沖縄以外のことも幅広く取材・執筆します。

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