大型クルーズ船ダイヤモンド・プリンセス号が着岸する横浜港・大黒ふ頭には、多くの救急車が集まっていた/2月7日、横浜市で (c)朝日新聞社
大型クルーズ船ダイヤモンド・プリンセス号が着岸する横浜港・大黒ふ頭には、多くの救急車が集まっていた/2月7日、横浜市で (c)朝日新聞社

 新型コロナウイルスによる感染の広がりが止まらない。世界保健機関は現状について、世界的な流行を意味するパンデミックではないとするが、「パンデミックは起きていて、それを見つけられていない」という見方が強まっている。AERA2020年2月17日号は、専門家に詳しい話を聞いた。

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「パンデミックではない」

 中国を中心に拡大を続ける新型コロナウイルスによる感染症について、世界保健機関(WHO)で感染症対策を担当するシルビー・ブリアン氏は4日のジュネーブでの会見でそう述べ、世界的大流行を意味するパンデミックではないと強調した。

 中国本土での感染者は、7日の国家衛生健康委員会の発表によれば3万1161人。636人が亡くなった。中国以外では、WHOの6日のまとめによると24カ国で216人が感染、1人が亡くなっている。中国での感染は広がり続けているものの、それ以外の各国では感染者を早期に見つけてほかの人との接触を断つことを通じて、ウイルスの広がりを封じ込めることができる──。それがいまのWHOの見解だ。

 しかし、ウイルスの広がりは公式発表のレベルをはるかに上回っているという見方が強まっている。

 香港大などの研究チームは、これまでのデータをもとに数学的な手法で計算をし、1月25日の段階で武漢市だけで7万5千人あまりが感染していたとする推計結果を医学誌で報告した。公式発表では、25日段階の感染者数は中国全体で1287人とされていた。

 今回のコロナウイルスと同じ種類のウイルスが起こし、2002~03年に流行して約800人の死者を出した重症急性呼吸器症候群(SARS)では、肺炎などの症状を起こした人を一般集団から隔離することで、ウイルスを封じ込めることができた。ただ、今回は感染してもはっきりした症状を示さず、しかもそうした人が他人に感染させている可能性が浮上している。

 北海道大の西浦博教授(理論疫学)らは、29~31日に武漢市からチャーター便で帰国した565人への検査結果について解析した。

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