すると、感染した人のうち症状を示していたのは半数しかおらず、感染しても検査で見つけられるまでに空白期間があることを踏まえると、「把握できている感染者の数は、実際の9.2%」と推計された。
感染者はおおむね、公式に把握されている人数の10倍にのぼると想定されるという。中国に限っても31万人に達する計算だ。こうしたケースは各国で起きていることも考えられ、西浦さんは「パンデミックが起こる可能性は高い」とみる。
新型ウイルスによる肺炎を発症した香港の男性が乗っていた、大型クルーズ船ダイヤモンド・プリンセス号の乗客乗員のうち、7日までに61人の感染が判明した。船内は一般的な建物に比べて廊下などが狭く、揺れに備える手すりなどを介して、香港の男性からウイルスが広がっている可能性が指摘されている。
東北大の押谷仁教授(ウイルス学)は「今回はクルーズ船という、閉じた空間だったから感染の広がりが把握できた」と指摘する。武漢市からの航空便や鉄道が停止された1月23日以前に日本を訪れた人をはじめ、症状が軽かったり無症状だったりした感染者から、すでにウイルスが広がっていたとしてもおかしくないという。
「世界の多くの国で感染拡大が起こるパンデミックに近い状態はすでに起きていて、それを我々が検知できていないだけなのかもしれない」
(朝日新聞編集委員・田村建二)
※AERA 2020年2月17日号より抜粋