国民の反応はと言えば、夫妻の「セミリタイア」を支持する声も多いという。アフリカ系アメリカ人である妃への差別的記事があり、それでも負けない妃の強さも報じられていた。同情と共感があるからの賛成で、「公務を減らしても暮らしはそのまま、結局いいとこ取りでは」と思われれば、元も子もない。

 女王の考えは明らかにされたが、ウィリアム王子(37)の思いは伝わってこない。彼だって「若い家族として新しい人生を築きたい」と思ったことがあるはずだ。「革新的で新たな役割」を模索できるものならしたいだろう。だが、たぶん彼は生涯、そういうことは口にしないのではないか。英王室のことは詳しくないが、長男と次男は違うだろうと思うのだ。ハリー王子の気楽さ。気楽が言い過ぎなら、自由さ。いずれにせよ、次男だからこそ。そう思ってしまう。(コラムニスト・矢部万紀子

AERA 2020年1月27日号より抜粋

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矢部万紀子

矢部万紀子

矢部万紀子(やべまきこ)/1961年三重県生まれ/横浜育ち。コラムニスト。1983年朝日新聞社に入社、宇都宮支局、学芸部を経て「AERA」、経済部、「週刊朝日」に所属。週刊朝日で担当した松本人志著『遺書』『松本』がミリオンセラーに。「AERA」編集長代理、書籍編集部長をつとめ、2011年退社。同年シニア女性誌「いきいき(現「ハルメク」)」編集長に。2017年に(株)ハルメクを退社、フリーに。著書に『朝ドラには働く女子の本音が詰まってる』『美智子さまという奇跡』『雅子さまの笑顔』。

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