横田基地では長年にわたり大量の泡消火剤が使われてきた。写真は1958年、本物のB29にガソリンをかけて行われた消火訓練の様子 (c)朝日新聞社
横田基地では長年にわたり大量の泡消火剤が使われてきた。写真は1958年、本物のB29にガソリンをかけて行われた消火訓練の様子 (c)朝日新聞社

 沖縄の米軍基地周辺で深刻化する地下水の水質汚染が、東京の横田基地周辺でも確認された。都は調査結果を公表していないが、専門家は継続的な調査や周辺住民の血液検査が必要と指摘する。

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 沖縄の米軍基地周辺で問題となり、アエラが昨年6月に東京の米軍横田基地でも懸念があると報じた有機フッ素化合物による水質汚染が、現実となった。

 東京都は昨年1月、横田基地に近い4カ所の井戸で有機フッ素化合物のペルフルオロオクタンスルホン酸(PFOS)とペルフルオロオクタン酸(PFOA)の濃度を調査。立川市の井戸で両物質合わせて1340ナノグラムを検出した。これは米国での飲み水についての勧告値(合わせて1リットルあたり70ナノグラム)の19倍にあたる。武蔵村山市内の井戸でも、勧告値の2倍超にあたる143ナノグラムが検出された。

 都は、多摩地区30市町村(一部を除く)などで地下水を水道水として配水している。昨年5月以降、多摩地区で地下水をくみ上げている浄水場のうち、過去に濃度が比較的高かった6カ所で臨時調査を実施。その結果、国分寺市にある東恋ケ窪浄水所で、勧告値を超える101ナノグラムを検出した。

 これを受け都は昨年6月、両物質の合計が米勧告値の半分(35ナノグラム)を超えないよう管理する方針を独自に決定。府中市にある府中武蔵台浄水所(昨年の臨時調査で60ナノグラム)と、国立市にある国立中浄水所(一昨年の調査で38ナノグラム)を加えた3浄水所の水源井戸の一部からくみ上げを止め、水源を川の水などに切り替えて濃度を下げる措置を取った。3浄水所の水は、水道水として数万件に配水されていた。

 都はこうした経緯や対策を公表していなかったが、朝日新聞が情報開示請求し、公開された文書と取材をもとに報じた。

「十分予想できた事態です」

 京都大学大学院医学研究科の原田浩二准教授(環境衛生学)はそう嘆息する。

 両物質は1950年代ごろから日用品の防水加工や工業製品の原料、洗浄剤などに使われ、特に大規模火災用の泡消火剤に含まれていることが、汚染の原因とされる。そのため空港や工場周辺の地下水や河川で高濃度検出され、米国では約20年前から健康被害が指摘されていた。

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渡辺豪

渡辺豪

ニュース週刊誌『AERA』記者。毎日新聞、沖縄タイムス記者を経てフリー。著書に『「アメとムチ」の構図~普天間移設の内幕~』(第14回平和・協同ジャーナリスト基金奨励賞)、『波よ鎮まれ~尖閣への視座~』(第13回石橋湛山記念早稲田ジャーナリズム大賞)など。毎日新聞で「沖縄論壇時評」を連載中(2017年~)。沖縄論考サイトOKIRON/オキロンのコア・エディター。沖縄以外のことも幅広く取材・執筆します。

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