原田さんは、「水道水の汚染濃度を下げるには浄水施設の活性炭フィルターの増設か、水源を切り替えるかいずれかの措置が必要」と指摘した上で、地下水の使用を中止した都の対応については「コストなども考慮のうえ、早急に実施可能な対応策として判断したのは妥当」とみる。

 ただ、原田さんはこうも指摘する。

「汚染された水道水を長年利用してきた人たちは、有機フッ素化合物の血中濃度が高くなっていることが疑われます。汚染が疑われる地域では、国や自治体などが血液検査を検討するべきです」

 原田さんがこう唱えるのは、住民の血液調査を実施し、健康被害の可能性を確認した前例があるからだ。昨年4月、小泉名誉教授とともに、米軍普天間飛行場近くの沖縄県宜野湾市内の一部住民を対象に、有機フッ素化合物の血中濃度調査を実施した。その結果は、驚くべきものだった。

 PFOSは全国平均(血液1ミリリットルあたり3・5ナノグラム)の約4倍にあたる13・9ナノグラム、PFOAは全国平均(1・5ナノグラム)の約2・2倍にあたる3・3ナノグラムと高い値だった。さらに、類似の有機フッ素化合物PFHxSが、全国平均(0・31ナノグラム)の約53倍にあたる16・3ナノグラムの高濃度で検出されたのだ。

 この調査は、普天間飛行場周辺の湧き水などでPFOSやPFOAが高濃度で検出されたことを受け、住民の依頼を受けて行われた。

 米空軍嘉手納基地を通る河川などを水源とする北谷浄水場から水道水を供給されている宜野湾市民44人と、比較のため、北谷浄水場から給水を受けていない沖縄本島南部の自治体の住民61人の血液を調査した。

 宜野湾市では、水道水を飲用している人はそうでない人と比べ、PFOS、PFOA、PFHxSの全ての血中濃度が高かった。一方、沖縄本島南部の住民は水道水を飲用しているかどうかで数値に差はなかった。

 PFOSの代替物質として使われているPFHxSは、PFOSやPFOAと同様に体内に蓄積される。最新の国連の報告書などで、肝機能やコレステロール値、胎児への悪影響などが指摘され、国際的に製造や使用の禁止が検討されている。

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