「中央線」でbutajiが歌うのは情緒だけではない

岡村詩野の音楽日和

AERAオンライン限定

2020/01/07 17:11

東京を拠点に活動するbutaji/PCI MUSIC提供
東京を拠点に活動するbutaji/PCI MUSIC提供
「中央線」は、同じく新曲の「same things, same time」と2曲同時にリリースされた/PCI MUSIC提供
「中央線」は、同じく新曲の「same things, same time」と2曲同時にリリースされた/PCI MUSIC提供

 今年最初にこのコラムで紹介するのは、歌の強さを伝えるbutaji(ブタジ)というシンガー・ソングライターだ。藤原幹によるソロユニットで、昨年12月に発売されたニュー・シングル「中央線」は、生命力にあふれている。伝えるのは、強さ、たくましさだけではなく、人間のもろさ、何かにおびえたり恐れたりする畏怖の心だ。

【butajiの新譜「中央線」のジャケット写真はこちら】



 東京を拠点に活動するbutajiは、2010年代半ばごろからインターネット上に自由に楽曲をアップロードするシステム「バンドキャンプ」「サウンドクラウド」などでコツコツと作品を発表してきた。15年に初のアルバム「アウトサイド」をリリース。生楽器による温もりのある音とエレクトロニクスを掛け合わせた作風と、聴き手を選ばないおおらかな歌声がじわじわと人気を集め、18年のアルバム「告白」はリスナーの世代や趣味嗜好を超えて高く評価された。

 彼の活動に共鳴する同業ミュージシャンも後を絶たない。若い世代の精神的支柱になっているサニーデイ・サービスの曽我部恵一(48)、ヒップホップやクラブ・ミュージック周辺のミュージシャンとも柔軟に合流する七尾旅人(40)、昨年は3人組「のろしレコード」としても作品をリリースした折坂悠太(30)……いずれも個の目線から社会との接合点を模索するようなシンガー・ソングライターたちが、butajiの歌世界に魅せられてきた。

 新曲「中央線」は、イントロなしにいきなり「中央線は今日も/荻窪 高円寺 阿佐ケ谷 三鷹……」と歌い始める。歌の舞台がまさしく東京の中央線沿線であることから、特に序盤、一聴すると60年代~70年代のフォークを思い出させる。だが、その後に続く「青白い車内の中で/見た目以上/君は疲れている/どうしたんだろう」という歌詞が、当時との隔たりを伝える。

 中央線は東京駅を起点に、御茶ノ水駅、新宿駅、三鷹駅などを経由して高尾まで西へと続く鉄道として有名だ。butajiはこの歴史ある路線をモチーフに、一定の情緒や感傷とは別に、時を重ねていくことの重みや不安も綴っている。鉄道や旅はえてしてメランコリックな素材になりがちだが、butajiはそこに陶酔してはいない。

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butajiが中央線をモチーフにした理由とは

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