一方、むくみが出て、梅雨時季にウツウツするという人には当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)。のぼせたり、青あざや静脈瘤ができやすいタイプなら、桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)。子宮に血がたまるのを改善させるため、子宮筋腫の人に使うこともある。

 ここまで紹介したHRTや漢方はすでに出ている症状への対症療法だが、女性はホルモンバランスの変動とのつきあいが思春期から始まる。吉野医師は、「特に女性医療は予防が大切。月経が始まったら低用量ピルを服用することも是非考えてほしい」と話す。

 中高生から?と思うかもしれないが、同医師によると妊娠・出産の予定もないのに排卵と月経を繰り返すことは、卵巣に大きな負担をかける。そもそも現代の女性は、子どもを10人近く産んでいたころの女性に比べて、生涯に経験する排卵・月経は9~10倍に増えているという。

「人類史上では異常事態です」(吉野医師)

 排卵・月経回数の増加は、子宮筋腫や子宮内膜症、卵巣がん、子宮体がんが増える原因にもなっているという。

 低用量ピルを服用すると、薬の作用で2種類の女性ホルモンが低めの安定した状態をキープするので、卵巣は起きずに眠った状態になる。薬を休むと出血するが、量は少なく、通常の月経より期間も短い。月経痛、貧血からも解放され、ホルモンが安定することで生理前と後で体調や気分も一定でいられるようになる。

 月経周期を自分でコントロールできるようになるため、受験やスポーツの大事な大会などに差し障ることもなくなる。吉野医師は言う。

「女性ホルモンは男性ホルモンに比べて変動が大きく、それによって起こる健康問題も深刻です。思春期からうまくホルモンバランスを調整する術を持っておくことは、その先の長い人生を健やかに生きるためにも、とても大事なこと。娘さんがいる女性は是非、母娘で一度婦人科に相談してみてください」

(編集部・石臥薫子、ライター・井上有紀子)

AERA 2019年12月9日号