2020年花粉飛散量予測【東京・大阪】(AERA 2019年11月25日号より)
2020年花粉飛散量予測【東京・大阪】(AERA 2019年11月25日号より)
2020年花粉飛散量予測【都府県】(AERA 2019年11月25日号より)
2020年花粉飛散量予測【都府県】(AERA 2019年11月25日号より)
樹齢30年超のスギは今後急増する(AERA 2019年11月25日号より)
樹齢30年超のスギは今後急増する(AERA 2019年11月25日号より)

 花粉症の人にとっては気が気ではない花粉飛散量。来年は例年より少なめの予測だが安心できない。最も多くの花粉を出す樹齢30年超のスギが、年々増え続ける予測があるからだ。花粉症を特集したAERA 2019年11月25日号の記事を紹介する。

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 日本気象協会は10月2日、2020年春の花粉飛散予測(スギ・ヒノキ)の第1報を発表した。それによると、九州から関東甲信にかけて広い範囲で例年より少ない見込み。特に、九州は非常に少なく、中国や四国でも非常に少ないところがあるという。東北は例年並みか少なめ。北海道は元々スギ花粉の飛散がほとんどない。

 花粉の飛散量は前年夏の気象条件が大きく影響する。気温が高く、日照時間が多く、雨の少ない夏は花芽が多く形成され、翌春の飛散量が多くなるといわれている。19年の夏は、梅雨前線の北上が平年より遅く、梅雨明けが平年より遅れた地方が多くなったことなどが、第1報の予測の根拠になっている。

 10月は台風接近が相次ぎ、豪雨被害に悩まされた。今後の予測に影響はあるのだろうか。

 協会は「花粉を出す植物が最も育つのは夏場。夏場の雨の影響以外にも、台風の強風で枝が折れたり、花粉が落ちたりすることも考えられる」と説明する。

 協会は年末までに第2報の発表を予定。来年1月以降も随時発表の見込みだ。第2報以降はスギなどの花芽の目視調査などで得られた植物学的な知見や、全国の保健関係者とも情報交換し、得られたデータも加味しながらアップデートしていくという。「花粉が飛散を始める直近になるほど精度が上がるので、予測を参考にしつつ活用してもらいたい」としている。

 ただ、来年は少なめ、と聞いてホッとするのは気が早い。

 日本医科大学の大久保公裕教授によると、最も多くの花粉を出すのは、樹齢30年超のスギだという。そして、樹齢30年超のスギは当面、増え続けるという予測があるのだ。

 林野庁のデータを元に作成した樹齢別のスギの面積(17年3月末時点)では、最も多いのが樹齢10~12年のスギだが、国内の木材は需要減少や海外材との競争で利用が激減しており、多くがそのまま樹齢を重ねる可能性がある。その場合、20年後には大量のスギが樹齢30年を迎え、かつて無いほどの花粉飛散量となるおそれがある。

 林野庁は(1)スギの積極的な伐採・活用、(2)花粉の少ないスギや広葉樹への植え替え、(3)スギ雄花を枯らす飛散防止剤などの開発──の三つを「3本の斧」と名付け、花粉発生源となるスギを減らす対策を進めている。悪夢のような未来の到来は、絶対に避けたい。(編集部・渡辺豪)

AERA 2019年11月25日号より抜粋

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渡辺豪

渡辺豪

ニュース週刊誌『AERA』記者。毎日新聞、沖縄タイムス記者を経てフリー。著書に『「アメとムチ」の構図~普天間移設の内幕~』(第14回平和・協同ジャーナリスト基金奨励賞)、『波よ鎮まれ~尖閣への視座~』(第13回石橋湛山記念早稲田ジャーナリズム大賞)など。毎日新聞で「沖縄論壇時評」を連載中(2017年~)。沖縄論考サイトOKIRON/オキロンのコア・エディター。沖縄以外のことも幅広く取材・執筆します。

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