保護者からは、「大学教員が試験監督をして、学生が採点とは本末転倒」という声があがった(C)朝日新聞社
保護者からは、「大学教員が試験監督をして、学生が採点とは本末転倒」という声があがった(C)朝日新聞社
AERA 2019年11月18日号より
AERA 2019年11月18日号より

 多くの懸念を呼んでいる、2020年度から開始予定の大学入学共通テストの国語と数学の「記述式問題」。導入の前提を覆しかねない、驚きのデータが16年、日本テスト学会で発表されていた。国立82大学のうち81大学が記述式を実施。一般入試募集人員の約88%が記述式問題を課されている──。東北大学の調査だ。

【図を見る】国立大学の個別試験は記述式が約9割

 これまで導入の根拠となってきたのは「国立大学の2次試験において、国語、小論文、総合問題のいずれも課さない学部の募集人員は、全体の61・6%」という文部科学省のデータだ。東北大に先んじて16年8月に発表された。これにより「国立大の記述式は約4割」というイメージが流布。推進派のなかには「国立大学の2次試験では4割しか記述式問題を出しておらず、6割の受験生が1文字も書かないで合格している」と発言する人もいた。

 日本テスト学会の副理事長で、大学入試改革の有識者会議委員も務めてきた、東京大学名誉教授の南風原朝和さんは次のように説明する。

「東北大が数学や理科、社会なども含めた全教科を調査したのに対し、文科省は国語に限定しています。国立大学はセンター試験のマークシートで測れない力を個別試験で課しており、記述が約9割というのは実態を反映しています。1文字も書かないどころか、相当量の記述を現在でも求めています」

 共通テストの記述式については「自己採点ができず、大学への出願がまともにできない」「採点者の質が心配」といった不安の声が多くあがっている。50万人を採点するには約1万人の採点者が必要といわれ、大学生のアルバイトが含まれる可能性も報じられている。

「採点者が大学生なんてあり得ない。採点ミスの責任は誰がとるのか?」(高校2年生)

「大学教員が試験監督をして、学生が採点とは本末転倒」(保護者)

 国語のプレテストの記述では、解答のぶれ幅を抑えるため問題文に複数の条件がつけられている。短期間に大量の採点をさばくためだ。しかしその結果、もはや「マークシート式と大差ない」との声もあがっている。南風原さんは言う。

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記述式の採点業務を落札したのは