緑を大胆に取り入れた東急不動産のオフィス(撮影/写真部・片山菜緒子)
緑を大胆に取り入れた東急不動産のオフィス(撮影/写真部・片山菜緒子)
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「モチベーションが上がる」など好評だという。脳波データで緑の効果を検証した(写真:東急不動産提供)
「モチベーションが上がる」など好評だという。脳波データで緑の効果を検証した(写真:東急不動産提供)
脳波測定器を頭部に装着し、ゲームアプリ「マインドリフト」をセット(右)。ユーザーの脳波状態に連動する黒服の宇宙人キャラクターの速度アップを図る(上)。アプリの利用料金はメニューごとに月額税別3千円(撮影/写真部・張溢文)
脳波測定器を頭部に装着し、ゲームアプリ「マインドリフト」をセット(右)。ユーザーの脳波状態に連動する黒服の宇宙人キャラクターの速度アップを図る(上)。アプリの利用料金はメニューごとに月額税別3千円(撮影/写真部・張溢文)
脳波にはさまざまな種類がある(AERA 2019年11月11日号より)
脳波にはさまざまな種類がある(AERA 2019年11月11日号より)

「脳の見える化」を図るテクノロジーを利用して時間管理や仕事の効率化、脳の活性化につなげていく──。そんな未来がすぐそこまで来ている。脳科学とITを組み合わせた「ブレインテック」をめぐる現状と課題を探った。AERA 2019年11月11日号に掲載された記事を紹介する。

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 東京都渋谷区にある東急不動産の本社ビル9階オフィス。目に飛び込んできたのは天井付近まで届くオリーブの老木だ。樹齢400年。職場のシンボルツリーだという。机、壁、天井、窓際。約1700平方メートルある仕切りのないオープンオフィスの随所に約250種類の植物が配置されている。

 同社はオフィス空間に緑を取り込むプロジェクトを2015年にスタート。緑が及ぼす効果の科学的裏付けを図る取り組みの一環として、今年5月に東京都港区の前オフィスで実施したのが、「感性アナライザー」という簡易脳波測定キットを用いた調査だ。

 従業員30人が脳波測定器を装着。デスクに緑を配した職場と、緑のない職場でタイピングなどのタスクを行ったところ、緑が置かれたデスクのほうが快適度や集中度、興味度、ワクワク度が上がり、ストレス度が下がることを確認した。タイピングの総数、正打数も緑があるほうが多かったという。

 同社はこの結果を受け、8月に移転した新オフィスに大胆な緑化を導入するに至ったのだ。

 脳のメカニズムの解明が進むにつれ、近年注目が集まっているのが、脳の情報を読み取ったり、脳に変化を与えたりする「ブレインテック」(ニューロテクノロジー)だ。

 脳の研究で従来使われていたfMRI(機能的核磁気共鳴画像法)といった脳活動計測装置は大型で高価なため、医療や研究機関の利用に限定されていた。それがここ数年、センサーの小型化や信号処理の発達・普及で、簡易ウェアラブル脳波計などの開発が相次ぎ、個人ユーザー向けの商品が数万円で入手できるようになったのだ。

 脳科学は産業や軍事分野への応用が期待されるため、世界各国が国家戦略として巨額予算を投じ、研究開発にしのぎを削る。国内でも、「革新脳」と呼ばれる国家プロジェクトや、脳情報通信融合研究センターの発足など先端技術の基礎研究や開発が進む。民間投資も過熱しており、英国王立協会は今年9月のレポートで、ブレインテックの市場規模は22年に133億ドル(約1.5兆円)に上る、と予測している。

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