「ラグビーの強豪国は南半球の国が多かった。そこからインフルエンザが持ち込まれたとしても不思議ではありません」

 インフルエンザウイルスは世界を循環している。日本では主に1、2月に流行するが、これは南半球の夏場にあたる。日本が夏を迎える時期には、冬を迎える南半球で猛威をふるう。

 8、9月、ちょうどインフルエンザの流行を迎えていたニュージーランドやオーストラリアの国々との交流が盛んだったことが、今季の早期流行に関係している可能性があるというのだ。

 来夏には東京オリンピック・パラリンピックという世界的な祭典が待ち受けている。

「今後、年間を通じてインフルエンザが蔓延する可能性は否定できません。唯一有効な予防法は、ワクチン接種です」

 自分で病院に予約を入れ、仕事を休んでワクチンを打ちに行くのはハードルが高いが、医師が会社に出向いて集団接種を実施した場合、断る人はほとんどいないという。こうした「ワクチンを接種しやすい環境作りこそ、感染拡大の防止には急務」と上医師は言う。

 インフルエンザが恐れられるのは、伝染力が強く、症状が重症化しやすいからだ。

「日本には、免疫力の落ちている高齢者や、がん罹患者も多い。予防としてワクチン接種を徹底すべきと考えています」

 子どもも大人に比べて、インフルエンザの抗体が少ない。学校で集団感染し、爆発的に広がる危険性もある。本格シーズンの到来前に、ワクチン接種や手洗いなど、予防策を再考したい。(ライター・小泉なつみ)

AERA 2019年11月11日号