7種類ある英語民間試験のうち47都道府県で受験できるのは英検(S-CBT)とGTECの二つだけ。「たくさんある検定試験から自分に合ったものを選べる」とされながら都市部と地方では選択肢の幅がまるで違う。

 地方の高校教員からは同じ県内の「地域格差」を問題視する声も上がっていた。

「県庁所在地に住んでいる生徒と、へき地に住んでいる生徒では、時間や経済的な負担がまるで違う。中心部に住む生徒は普段通りの生活の延長上で受験できるのに対し、へき地の生徒は飛行機に乗ったり、前泊しないといけなかったり。移動と金銭の負担が半端ない。とても公平な制度とはいえない」

 さらに民間試験は受験料が5千円台から2万円台までまちまち。裕福な家庭の生徒ほど本番前に練習受験ができ有利に働く。受験料を含めた諸費用の負担から大学受験をあきらめないといけなくなる生徒も出てくることなども問題視されていた。

 これらの指摘を知りながら、萩生田大臣は番組内でこう発言した。

「自分の身の丈に合わせて(試験)を選んで勝負して頑張ってもらえれば」

 本来、教育格差を是正すべき立場の文科相が、格差を前提としていることに非難が集中。「教育基本法」に抵触するとの声も上がった。

 さらに深刻なのは、英語民間試験の問題は「公平性」に限らない点だ。京都工芸繊維大学の羽藤(はとう)由美教授は一貫して、民間試験の「不公正」を問題提起してきた。

「英語民間試験が延期されたことはよかったですが、補助金などを出して地域格差や経済格差の問題を解消すればいいでしょう、となっては解決しない。複数の民間試験の活用は、マラソンと50メートル走の成績を比べて、走力の優劣を決めるようなもの。異なる試験の成績を対応させるため導入された共通指標『CEFR(セファール)』の活用自体にも問題がある。セファールと各試験の成績の対応づけも各事業者が自己申告したもので、第三者による検証が行われておらず、公正さにはほど遠い」

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アンケートに寄せられた教員たちの叫びは