「特に女性は鉄不足の人が多い。クリニックに『うつ病かもしれない』と来た女性のうち、約8割が鉄不足でした」(同)

 鉄不足を防ぐには何を食べればいいのか。姫野医師いわく、「まずはヘム鉄です」。

 鉄には動物性食品に含まれる「ヘム鉄」と植物性食品に含まれる「非ヘム鉄」があるが、吸収率が高いのはヘム鉄。レバーや牛肉、鶏肉、鶏の砂肝、カツオ、アサリなどに多く含まれる。

都内の会社員の女性(43)は最近、論理的な思考ができなくなったと嘆く。

「年のせいかなと思うのですが」

 思考がまとまらない、アイデアが思い浮かばない、会議中に話の流れがわからなくなる、何度も同じ話をしてしまう……そんな場合は、たんぱく質が足りていない可能性がある。

 脳は基本的にたんぱく質と脂質でできているが、脳のエネルギーとなる神経伝達物質の原料もたんぱく質だ。さらに、ホルモンや神経伝達物質と結合する細胞膜受容体もたんぱく質からできている。不足すると神経と神経がうまくつながらなくなり、頭の回転が鈍くなってしまうのだ。

 1日にとりたいたんぱく質の目安は、体重1キロあたり1~1.5グラム。体重50キロの人なら約50~75グラムが目安となる。卵1~2個、肉や魚各100グラム、豆腐半丁、納豆1パック、豆乳200cc、間食にナッツや小魚。これでだいたい1日分だ。複数種類のたんぱく質を3回の食事と間食にわけてとるのが理想だという。

「たんぱく質を含む食品の多くは、ビタミン・ミネラルも豊富です。また、必要量のたんぱく質をとると満腹感が得られ、結果的に糖質のとりすぎを防ぐことができます」(姫野医師)

(編集部・野村昌二)

AERA 2019年10月7日号より抜粋

著者プロフィールを見る
野村昌二

野村昌二

ニュース週刊誌『AERA』記者。格差、貧困、マイノリティの問題を中心に、ときどきサブカルなども書いています。著書に『ぼくたちクルド人』。大切にしたのは、人が幸せに生きる権利。

野村昌二の記事一覧はこちら