紀平梨花 (c)朝日新聞社
紀平梨花 (c)朝日新聞社

 今季も紀平梨花が順調だ。トリプルアクセルに加え、4回転サルコウをプログラムに加えるなど、シニア2年目も躍進が止まらない。ジャンプもさることながら、状況に応じた冷静な判断力も紀平の武器だという。AERA 2019年9月30日号に掲載された記事を紹介する。

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 シニア2年目の紀平梨花(17)。初戦オータム・クラシックでトリプルアクセルを計3本降り、合計224.16点で圧勝した。

 ショートでは、練習での好調をそのまま維持し、冒頭で力強いトリプルアクセルを成功。エスニック調の大人びたジャズに乗り、情熱的な踊りを見せると78.18点を叩き出した。

「すごく息切れするプログラムで、初めて教えてもらった時はジャンプなしでも体力が持たないぐらいでした。すべてのジャンプを絶対に決めたかったので、それができてよかった」

 昨季からの成長を見せたのは翌日のフリーだった。首位発進ながら、2位のエフゲニア・メドベージェワ(19)に約3点差で追われる展開。新技の4回転サルコウへの期待も背負う。最初の試練は、朝の公式練習がサブリンクで行われたことだった。

「トリプルアクセルはすごく繊細な感覚で、氷と自分の感じを合わせていかないと跳べない」

 というタイプの紀平にとって、異なるリンクでの練習は不利な要素になり得た。しかし落ち着いて判断した。

「サブリンクは氷が硬く、本番リンクはもっと表面がサラサラしていたので、感覚が全然違う。本番前の6分間練習だけで、メインリンクの感覚をどれだけ取り戻せるか。これは4回転ジャンプどころじゃない。一番は勝つことが大事」

 4回転に初挑戦したい気持ちを抑え、見送ることを決意。トリプルアクセル2本をしっかり降りる作戦に切り替えた。

 朝練から約4時間後、メインリンクで6分間練習がスタート。予想どおり感覚が変わり、朝は絶好調だったトリプルアクセルが狂っていた。

「踏み込むときに、思った以上に氷の表面をズルッと(上滑り)してしまい、タイミングが合わなくなっていました」

 手応えをつかめず6分間練習が終わる。最終滑走の紀平は、30分以上待ち時間があった。

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