在韓米軍の撤退はもはや既定路線 田岡俊次が朝鮮半島の軍事バランスを分析 (3/3) 〈AERA〉|AERA dot. (アエラドット)

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在韓米軍の撤退はもはや既定路線 田岡俊次が朝鮮半島の軍事バランスを分析

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ソウルの南方60キロの平沢にある在韓米軍司令部。港や空軍基地に近く、対北朝鮮より世界各地への出動に軸足を置いていることがわかる (c)朝日新聞社

ソウルの南方60キロの平沢にある在韓米軍司令部。港や空軍基地に近く、対北朝鮮より世界各地への出動に軸足を置いていることがわかる (c)朝日新聞社

 北朝鮮海軍も旧式のフリゲート2隻と中国製の潜水艦20隻。これはソ連が50年代に造ったR型のコピーで戦力にならない。工作員潜入用の小型潜水艇の一部が行動可能と思われる。韓国海軍は1万9千トン級の揚陸艦(ヘリ空母)1隻、潜水艦(1300トン~1900トン)16隻、巡洋艦、駆逐艦、フリゲート計22隻、哨戒艦(1200トン)18隻だから圧倒的優勢だ。

 こうした状況だから、韓国軍将校の一部からは米韓連合軍の「戦時作戦統制権」(指揮権)をいまだに米軍が握っていることに不満が出る。米軍は94年に平時の指揮権を韓国軍に譲り、盧武鉉(ノムヒョン)大統領は06年に戦時作戦統制権の返還を求めた。米国もイラク戦争中で戦費に窮し、在韓米軍兵力を削減したかったから、07年2月の米韓国防相会談で両国は12年4月に統制権を韓国に移すことで合意した。

 だが財政負担や北朝鮮の核・ミサイル開発への対処といった問題もあり、李明博(イミョンバク)大統領は10年6月の米韓首脳会談で統制権移管を15年12月まで延期することにした。次の朴槿恵(パククネ)大統領も「20年代中ごろまでに」と再度延期した。

 文在寅(ムンジェイン)大統領は在任期限の22年5月までに統制権移管の実現を目指している。6月3日、米韓国防長官会談で移管の後は米韓連合軍の司令官に韓国の大将が就任することが確認された。ソウルの龍山(ヨンサン)米軍基地から平沢に移る連合司令部の工事完成は22年初めになる様子だ。

 これまで米軍が他国軍の指揮を受けたのは、小部隊が臨時にそうなった場合だけだ。在韓米軍全体が韓国人の司令官の指揮下に入ることを米側が承認したのは、戦闘部隊を撤収する構想があるためではないかと思われる。

 米戦闘部隊が撤退したらどうなるのか。もし北朝鮮が自暴自棄となり、核ミサイルを発射するような事態となれば、常にアラスカ沖で待機している米軍の潜水艦から弾道ミサイルで報復核攻撃することで、数日で大勢が決する可能性が高く、「有事来援」は間に合わない。

 通常兵器による戦争なら韓国軍は独力で北朝鮮軍を撃退できるだろうが、核兵器使用やミサイル防衛、偵察衛星、サイバー戦などは米軍に頼らざるをえない。米韓連合軍司令官になった韓国の大将は、副司令官の米軍将官と常に協議し、勧告を受ける立場となりそうで、実態は今とあまり変わらず、韓国軍の面目が保てるだけかもしれない。(軍事ジャーナリスト・田岡俊次)

AERA 2019年9月16日号


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