2020年度、大学入試はセンター試験から大学入学共通テストに変わる。その制度設計に不安の声が多くあがっている (c)朝日新聞社
2020年度、大学入試はセンター試験から大学入学共通テストに変わる。その制度設計に不安の声が多くあがっている (c)朝日新聞社
「英語民間検定試験」2020年度実施概要(AERA 2019年9月2日号より)
「英語民間検定試験」2020年度実施概要(AERA 2019年9月2日号より)
「英語の民間試験」の実施、どう思う?(AERA 2019年9月2日号より)
「英語の民間試験」の実施、どう思う?(AERA 2019年9月2日号より)
何が問題なのか?(AERA 2019年9月2日号より)
何が問題なのか?(AERA 2019年9月2日号より)

 2020年度からの大学入学共通テストに「中止」「延期」を求める切実な訴えが相次いでいる。異例の抗議と混乱が続くなか、文科省は実施を強行する構えだ。

【「英語民間検定試験」現場からの悲痛な声続出】

*  *  *

「高校生です。当事者不在の議論に疑問を感じます。高校生の生の意見を、文科省のトップや幹部に伝えてください」

 こう訴えたのは、都内の私立高校2年の男子生徒(17)だった。8月1日、東京都港区の日本学術会議講堂で開かれた、高校の国語教育をめぐるシンポジウム。大学教授らと、学校教育に指導や助言を行う文部科学省の視学官らが登壇し、2018年3月に告示された新学習指導要領をめぐって討論が行われた。冒頭の発言が飛び出したのは、会の終盤、質疑応答に入った時だ。男子生徒の視線は壇上の文科省の視学官に向かっていた。会場は一瞬しんと静まった。

「今の時期になってまで制度や問題に変更が加わるような、おぼつかない大学入学共通テストは、早急に延期もしくは中止にしてください」

 彼らが受験する20年度から、大学入試はセンター試験から「大学入学共通テスト」へ変わる。英語は民間の検定試験を利用して「読む・聞く・話す・書く」の4技能を測り、国語と数学は「記述式問題」を導入する。

 特に英語については、複数の民間試験を使ってうまくいくのか、告示当初から懸念の声はあがっていた。懸念は解消されないまま膨らみ、今年6月には大学教員らが英語の民間試験の利用中止を求める請願を国会に提出し、7月にはTOEICが試験団体から撤退した。

 高校生が共通テストの延期や中止を直訴するのは、尋常ではない状況があるからだ。男子生徒はAERA取材にこう答えた。

「TOEICが英語の民間試験から撤退して、勉強していた人たちはかわいそうと思っていたら、国語や数学の記述問題の採点を大学生がするかもしれないというニュースが流れてきた。と思ったら、今度は数学の記述が数式とかだけになったって。次から次へとこんな状態では、20年度実施はどう考えても無理ですよね? 友だちとも、『やばくね?』という話になります」

 男子生徒は教員志望。この夏から、大学受験に向けて基礎固めの勉強を始めた。カバンの中には受験予定の民間試験の参考書が入っていた。前日にツイッターでシンポジウムを知り、高名な学者たちの話を直に聞ける好奇心から参加した。

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