「学期中の保護者会やPTA関連の会議はもちろん、入学前健診や学校主催の説明会も、平日昼間の開催。学年委員も全学年30人のうち父親はたった3人。バランスが悪いと感じた」

 学年委員のメインの活動は、ベルマークの集計だ。黙々と作業する途中、ある母親の「月に1度、これに集中する作業がリフレッシュになるのよね」という言葉が印象に残った。集めたマークから得られる対価と委員の作業時間からざっと計算して、1人当たりの時給は数百円に満たない。しかし、「ここにビジネスの論理を持ち出しても通用しない」と感じ取った男性は、問題点を指摘するのは控えているという。

 小学生になった途端に立ちはだかる「子育ては母親中心」という高い壁。「パパが継続的に子育てに関わるために、何が必要だと思うか?」と問うと、男性はこう答えた。

「男女問わず、日中に仕事をしている親でも参加しやすい会合の設定は必須。同時に、職場の雰囲気も変わっていくべき。PTAや学校行事のための有休や早退を男性がしようとすると、男性に対して『奥さんじゃダメなの?』という思想を徹底的に排除していかないと」

 最近では、化学大手のカネカの男性社員が、育休復帰直後に転勤を命じられたとして、この男性の妻がツイッターで告発。会社の対応が問題だと炎上した。

 男性たちの意識の変化に、まだまだ社会や職場の環境は追いついていない。それでも果敢に子育てに関わる男性たちが増えることで、状況は変わりつつある。前出の広中さんは育休取得中に「児童館を巻き込んだ新規サービスができそうだ」と気づき、現在もパパ目線でのサービス事業を構想中だという。

 パパ子育ての実践者が増え、裾野が広がった先に、男性が子育てしやすい社会も生まれるのだ。(ライター・宮本恵理子)

AERA 2019年7月29日号