イラスト:小迎裕美子
イラスト:小迎裕美子
若手とベテランで意見が分かれる(AERA 2019年6月24日号より)
若手とベテランで意見が分かれる(AERA 2019年6月24日号より)

「れいわ」「めにゅー」「としょかん」。これらの言葉をみなさんはどのようなアクセントで発音しているだろうか。最近、あらゆる言葉を平たく発音する人が増えてきた。平板化する日本語アクセントの謎について、放送関係者や専門家などがその見解を示す。

【NHKアナウンサーに支持するアクセントをアンケートした結果はこちら】

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「このレタスがまた、シャキシャキしてて美味しいですね~」

 テレビのバラエティー番組を見ていて違和感を覚えた。レポーターが、通常は1拍目にアクセントを置く「“レ”タス」を「レ“タス”」と平たく発音したのだ。(※アクセントの高いところにダブルクオーテーションマークを入れて示しています)

 このところ、「“メ”ニュー」「図書館(と“しょ”かん)」など、どこかに下がり目のある「起伏型」で発音されてきた言葉を、「メ“ニュー”」「と“しょかん”」と平坦に発音する人が増えている。言語学では「アクセントの平板化」と呼ばれる現象だ。最近では新元号「令和」のアクセントが「“れ”いわ」か「れ“いわ”」かで、テレビ各局の方針が分かれ、最終的に内閣府が「どちらでもよい」と答えたことも話題になった。

 現在50代の筆者は、以前は起伏型だった「し“め”さば」や「ゆ“で”めん」が平板化されても、もう違和感はない。しかし、「レ“タス”」は気になった。

「平板化をどこまで受け容れるか、その見極めはひじょうに難しい。苦渋の作業の結果が、これです」

 こう話すのは、元NHKアナウンサーで現在はNHK放送文化研究所の主任研究員、滝島雅子さん(52)だ。「これ」とは、民放を含む全国の放送局でアナウンサーやナレーターなどが参照する『NHK日本語発音アクセント新辞典』を指す。

 2016年、18年ぶりに行った改訂では、NHKの全アナウンサー498人から約1万2千語の「アクセントの要修正候補」を洗い出し、最終的に約3300語のアクセントについて変更が加えられた。

「その言葉のアクセントが一般的に『正しい/正しくない』ではなく、あくまでも『放送上、ふさわしいかどうか』で判断しています」(滝島さん)

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小長光哲郎

小長光哲郎

ライター/AERA編集部 1966年、福岡県北九州市生まれ。月刊誌などの編集者を経て、2019年よりAERA編集部

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