吉田は2軍でほとんど直球しか投げていない。球団は変化球でかわす投球を許さなかった。本人も「変化球は操れていない」。9試合で26回を投げ、0勝3敗、防御率4.15。勝利投手の権利を得られる5回を投げていない。1軍デビューまで2軍で一定の投球回数をこなすプログラムを当てはめる選手ではなかったようだ。

 今月4日のイースタン・リーグの巨人戦では3回、被安打6の6失点。それでも、栗山英樹監督の考えはぶれなかった。「まっすぐにこだわっている姿を見て、こっちはいけると思った」。レベルの高い1軍のマウンドを経験させることが、成長への近道と考えてきた。高校時代は強豪校に果敢に挑み、デビュー戦が広島だったのも好都合だった。

「まっすぐっていう特徴がある。こっちは選手の特徴を借りて一番(優勝)になろうと思っているので。鉄は熱いうちに打たないといけない」(栗山監督)

 高卒新人の投手デビューは交流戦の札幌ドームで──。ダルビッシュ(現カブス)、「二刀流」だった大谷(現エンゼルス)の投手デビューも、そう。スター街道を歩んでいった球団の先達と、その歩みは重なる。吉田が初登板でみせた闘争心と冷静に試合をつくる力。直球がプロでも通用し、その総合力が高いことを証明した。 

(朝日新聞スポーツ部 坂名信行) 

AERA 2019年6月24日号