また、選手の身体面のケアにも配慮する必要がある。エンターテインメントの要素が強く、マイクパフォーマンスが多いWWEに比べ、新日本は「スポーツ」の色合いが濃い。試合で受ける選手たちのダメージは、他団体よりも大きいのだという。

 従来は日本の興行のオフに休養していたが、海外からのオファーが増えた現在、ケアにあてられる時間は限られるようになってきた。

 菅林はそこで「新日本を二つのグループに分けることを考えている」という。

「もちろん大きなイベントは一緒にやるが、原則は別々に行動するようなイメージ。年中舞台に誰かが立っている宝塚歌劇団もそうでしょう」

 MSG大会は成功だった。それでも、喜びに浸っている暇はない。この大会は、提携先の米プロレス団体「ROH」が提案し、共催者に名を連ねて成り立った。

「今度は単独でやりたいですね」

 菅林はそう目標を語り、ようやく白い歯を見せた。

 新日本は、格闘技界の百獣の王・ライオンをめざす。「ニュージャパン」はまだ、第一歩を踏み出したヤングライオンにすぎないのだ。(文中敬称略)(朝日新聞ニューヨーク支局・藤原学思)

AERA 2019年5月13日号