「たとえば、北部訓練場(沖縄県東村など)の返還もヘリパッド移設の条件が付けられ、東村高江地区に集約されました。沖縄の基地縮小をうたいながら、実際は米軍の効率的運用が優先された面もあります。これは沖縄側が求めた当初の意図とは異なります。こうしたことも検証すべきでしょう」

 2016年に実現した北部訓練場の一部約4千ヘクタールの返還は、ヘリパッド建設に対する反発の高まりなどを受け、02年度末の目標から大きくずれ込んだ。普天間飛行場の返還は今なお見通しが立っていない。江上氏は言う。

「県内での移設や統合が中心のSACOの進め方でいいのか、客観的に検証する場は絶対必要です。日、米、沖縄の三者が意見を出し合い、基地の整理縮小を前進させる必要があります。でなければ、沖縄の人たちの怒りは今後も収まらないでしょう」

 SACWO設置に取り組むことで、政権は沖縄に対して「最低限の誠意」を示すべきだ、と江上氏は訴える。

「玉城知事は今回、『辺野古即断念』を政府に突き付けるのではなく、穏当な『協議機関の設置』を求めました。この要請すら拒むのは、沖縄の声に一切耳を傾けないというのと同じです。首相と知事の面談も形式だけ。何も聞かないというのであれば、これはもう政治じゃない」

 SACWOのような協議機関の必要性は、日米間の安全保障政策の専門家も指摘している。その一人が、元米海兵隊政務外交部次長で政治学者のロバート・エルドリッヂ氏だ。

「最大の問題は、日米政府と沖縄県の対話があまりにも足りないことです。長年、『ポストSACO』の議論が必要だと問題提起してきましたが、互いの立場を理解する協議になれば、(SACWOは)よい機会になるでしょう」

 エルドリッヂ氏は現行の「辺野古」案をこう否定する。

「政治、環境、軍事、財政、戦略の面で問題がある、最悪の計画です」

 軍事的な問題の一つは、緊急時の民間空港の滑走路使用だ。

 滑走路が1190メートルの辺野古新基地は、2740メートルの滑走路をもつ普天間飛行場の代替施設としては不十分で、米側が緊急時には那覇空港など「民間施設」を使用できるよう求めている。日本政府は武力攻撃事態を想定した「特定公共施設利用法」などを挙げ、緊急時の那覇空港の米軍使用について「特段の問題は生じない」との立場だが、エルドリッヂ氏は機能面の懸念を示す。

次のページ