タレントでエッセイストの小島慶子さんが「AERA」で連載する「幸複のススメ!」をお届けします。多くの原稿を抱え、夫と息子たちが住むオーストラリアと、仕事のある日本とを往復する小島さん。日々の暮らしの中から生まれる思いを綴ります。
【在京6局の女性アナウンサーが地上デジタル放送への移行をPRしたことも】
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随分前からしつこく「女子アナ」なんていう俗称は絶滅してしまえ、と言っている小島です。みなさん「女子アナ30歳定年説」って聞いたことありますか。いつからか週刊誌が言い出したのですが、要するに人気女子アナも30歳で後輩にとってかわられるという「説」です。
実際テレビ局でも、バラエティーだろうとニュースだろうととにかく新人アナ、と飛びついた時代がありました。今は30代、40代になって子どもを産んでからもちゃんと活躍しているアナウンサーがたくさんいますから、確実に変わってきています。まだ一部には、若くて可愛い子を取っ換え引っ換えしたいという古臭いキャスティングが残っていますが、かつてに比べれば随分と人材の幅が広がりましたよね。いいぞ。
そもそも女子アナブームの始まりはフジテレビに八木亜希子さん、河野景子さん、有賀さつきさんが入社した1988年。調べてみると、「女子アナ」という言葉はこの時フジテレビで発明されたようです。当時の人気企業だったテレビ局の新人OLをタレントのように売り出す究極の内輪ウケが、30年もの間、テレビの中の花形としてもてはやされ、若い女性の一種のロールモデルのようになっていました。と言うよりむしろ逆で、全国の職場の光景、つまり若い女性社員を品定めしてからかい、職場の華ともてはやしては、女だからと侮るような性差別的な扱いが、テレビの中で固定化されてきたのです。ジェンダー意識が高まり、もうそれに古臭さを感じる視聴者は少なくないでしょう。アナウンサーの受験者も減っていると聞きます。
「女子アナ30歳定年説」は本当でした。30年経って、ついにそんな俗称は滅びつつあるのです。女性は従順な職場の華であれ、なんて時代は終わりです。週刊誌「SPA!」に抗議をした女子大生が支持されたように、最近は意見をはっきり言う女性が肯定されるようになりました。テレビ画面の中でも、今後はそんな変化を体現する女性たちが活躍しますように!
※AERA 2019年2月18日号