日本医科大学・大久保公裕教授の問診(AERA 2019年2月18日号より)
日本医科大学・大久保公裕教授の問診(AERA 2019年2月18日号より)

 毎年、春の訪れとともに多くの人を悩ませる花粉症。これまでは薬物療法や手術療法などが用いられてきたが、今後はそれぞれの人の体質に合わせた「オーダーメイド治療」が注目されるかもしれない。

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 花粉症対策のキーワードとなる「オーダーメイドの治療」を、すでに実践している名医たちがいる。

「ライフスタイルが違えば治療法も変わります」

 そう語るのは、アレルギー疾患のエキスパートで花粉症治療の先駆者である日本医科大学の大久保公裕教授(59)だ。

 最もつらい症状は。発症時期は。過去の検査・治療履歴は。約20分間かけて行う初診の聞き取りは計39項目の問診票に基づく。穏やかな口調で次々発せられる質問には、アレルギー疾患に関する圧倒的な知識の裏付けがある。花粉症患者の症状や生活環境を徹底的に洗い出すその姿はさながら「白衣をまとった探偵」の様相だ。

 働く人が一日の大半を過ごす職場。仕事は日勤か夜勤か。職場は主に屋内か屋外か。屋外での活動時間はどれくらいあるのか。出勤時間は。車は運転するか……。その上で、車を運転する人は眠気などの副作用がない薬を処方し、屋外での活動時間が長い人には花粉が付着しやすい羊毛類の衣類を外側に羽織らないようアドバイスする。

 居住地も大事な要素だ。大久保教授の問診で不可欠なのが「川の近くにお住まいですか?」という質問だ。川の上には橋以外に構造物がなく、上流部の山にはスギが多く植えられている。スギ花粉は太陽光を浴びる明け方に山間部を出発。川に沿って風に乗り、平野部に舞い降りる。大久保教授は言う。

「川の近くはスギ花粉が最も早く、大量に飛来するエリアです。スギ花粉の発生源からどれくらいの位置に住んでいるかでアドバイスも異なります」

 川の近くに住んでいる人には、外出時は日中だけでなく、早朝も花粉を防ぐマスクやメガネの装着を勧める。居住地と出勤時間の相関関係は花粉症の悪化を防ぐ上で大事な要素だ。

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渡辺豪

渡辺豪

ニュース週刊誌『AERA』記者。毎日新聞、沖縄タイムス記者を経てフリー。著書に『「アメとムチ」の構図~普天間移設の内幕~』(第14回平和・協同ジャーナリスト基金奨励賞)、『波よ鎮まれ~尖閣への視座~』(第13回石橋湛山記念早稲田ジャーナリズム大賞)など。毎日新聞で「沖縄論壇時評」を連載中(2017年~)。沖縄論考サイトOKIRON/オキロンのコア・エディター。沖縄以外のことも幅広く取材・執筆します。

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