俺、そんなにやばい状態だったのか。よし、やってやろう。やるしかない。

「最初の数日は色々試してみてから、本格的にスタートするといいですよ」

 牧田医師の指示に従い、いろんなものを食べては数値を測り、食べては測り。血糖値が「見える化」したことで、同じものを食べても状況によって数値の変化が全く違うことがわかってきた。糖質の少ないものでおなかを満たしてから糖質のあるものを食べると、数値の上昇が大幅に抑えられる。そして何より、歩けば如実に下がる。

 12月中旬、満を持して血糖値ダイエット開始。酒も肉も一切我慢しない。ただし、ごはんや麺は食べず、酒は蒸留酒かワインにする、と決めた。

 スタートを祝って、お昼はとんかつ。実験期間に食べたときは「血糖値52アップ」だったが、この日はキャベツをたっぷり食べてから肉に手を付ける作戦で上昇を抑え、昼休みの残りは会社周辺を歩くことで1時間とかからず140を切った。なんかいけそうな気がする。

 会心だったのは9日目。お昼に一瞬151を記録したものの、すぐに降下。夜は部下2人と焼き肉店に。たっぷり食べ、ホッピーを6杯飲んでいい気分になりながらも、140以下に抑えきった。肉は低糖質なのだ。

 折しも忘年会シーズン。その前日、ベルギービールの1次会では198と完敗だった。だが錦糸町のスナックでウイスキーを痛飲するうちに122に。蒸留酒は数値を上げないばかりか抑えてくれる。深夜2時、30分歩き自宅に着いたら98だった。

 始めてみてすぐに気付いた。今までになく歩いている。「痩せるため」「健康のため」といくら言われても歩く気がしなかったが、「血糖値を下げてうまいものを食べるため」なら、むしろ歩きたい。銀座へ、日本橋へ、錦糸町へ歩く。iPhoneによると、5千歩を切ることもあった1日の歩数が、ほぼ毎日1万数千歩を記録していた。

 もう一つ。家で食べた方が「お得」だ。元々砂糖を多く使う方ではないので、自分で作った料理で140を超えることはなかった。家なら好きなものを好きなだけ作って食べられる。

 99.4キロだった体重が、8日目には1.6キロ減。お正月の実家で歩数が5千歩を切る日が続いたため少し増えたものの、最終的に3週間で1.8キロ減だった。血糖値にも変化が表れ、朝は90を切る日も。このままだと、スリムで健康なおじさんになってしまいそうだ。(編集部・上栗崇)

AERA 2019年1月21日号