小島慶子(こじま・けいこ)/エッセイスト。1972年生まれ。東京大学大学院情報学環客員研究員。近著に『歳を取るのも悪くない』(養老孟司氏との共著、中公新書ラクレ)、『幸せな結婚』(新潮社)
小島慶子(こじま・けいこ)/エッセイスト。1972年生まれ。東京大学大学院情報学環客員研究員。近著に『歳を取るのも悪くない』(養老孟司氏との共著、中公新書ラクレ)、『幸せな結婚』(新潮社)
東京医大の問題を受け、昨年8月には「医学部入試における女性差別対策弁護団」が結成された (c)朝日新聞社
東京医大の問題を受け、昨年8月には「医学部入試における女性差別対策弁護団」が結成された (c)朝日新聞社

 タレントでエッセイストの小島慶子さんが「AERA」で連載する「幸複のススメ!」をお届けします。多くの原稿を抱え、夫と息子たちが住むオーストラリアと、仕事のある日本とを往復する小島さん。日々の暮らしの中から生まれる思いを綴ります。

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 新しい年を穏やかに迎えようと思ったら、正月早々騒ぎになった「わたしは、私。」。

 安藤サクラさんが演じる女性に何個も何個もパイがぶつけられ「女の時代、なんていらない?」と語りが入る西武・そごうの広告です。女性差別だらけの社会で、お仕着せの女性活躍を目指すよりも自分らしく輝きたい、というメッセージを打ち出したつもりだったようですが、これまでの文脈をまったく読めていなかったため、炎上。Creampieは英語のスラングで“中出し”を意味するそうですが、それを知らずとも見ていて胸が痛くなるような、この社会で女性であることがつくづく悲しくなる映像でした。

 昨年は東京医大をはじめとした医学部入試での点数操作が明らかになり、女性差別が黙認されてきた社会構造に対してNOの声が上がりました。ハラスメントの報道も相次ぎ、それまでは「よくあること、細かいこと」だったものが「あってはならないこと、大事なこと」になった、節目の年だったのです。

 女性は気づいたんです。ここ30年「個として素敵に輝く」ことを推奨され、それに乗っかって消費行動や自己表現を変えてはきたけれど、女性を排除する社会構造自体は何も変わっていなかったことに。やっぱりちゃんと「社会を変えよう」って言わないとダメだよね、と。

 そんな中、週刊SPA!が「ヤレる女子大学生ランキング」を掲載。女子学生がすぐさま抗議の署名活動を始め、ネットで拡散、編集部が謝罪を表明するという騒動が起きました。今まではOKだったのに、なんで急に? とポカンとしている編集者の顔が見えるようです。去年の一連の出来事を他人事だと思っていた人たちには、時代の変化が見えていないのですね。

 今年も、変えるべきものは変えようと言う年になるでしょう。誰が? そう、私たちが。わたしは、公。小さな声も無駄じゃないともう私たちは知っています。一昨年の#MeTooに始まり、個人の声が社会を変えつつあることを改めて感じた年明けでした。

AERA 2019年1月21日号

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小島慶子

小島慶子

小島慶子(こじま・けいこ)/エッセイスト。1972年生まれ。東京大学大学院情報学環客員研究員。近著に『幸せな結婚』(新潮社)。共著『足をどかしてくれませんか。』が発売中

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