みな戦略的に下からの攻め方を知っている。つまり賢いのである。ところが山梨はクラスで言えば中の下、ゆえにキャラがない。しかも周りから「富士山って静岡だよね?」と久しぶりにいじられれば、思わずムッとしてしまう。

 このポジションにいる人間が往々にしてそうであるように、プライドが高いからそうなる。

 山梨の人は、他県の人がやって来ると喜んで刺し身を出す。郷土料理のほうとうを出せばよいのに、それは恥ずかしがって出さない。家にいる普段着を見られるような気分になるからだ。なので、海なし県の自分たちにとって一番上等なものを「おもてなし」だと思って出してしまう。しかし、日本の多くは海あり県。まさか山梨に来て刺し身を出されるとは思わないだろう。以前そのことを(シンポジウムのような場所で)当の山梨県の人に言うとムッとされた。「私たちの好意を笑うのか」と。

 私はこういう天然の山梨がカワイイと思っている。というか、ようやくそう思えてきた。どうかみなさん、近くて遠い秘境山梨をいじってもらえたらと。でも、いきなり「いいね~山形県」とかっていじらないでね、まだ。

※AERA 2018年12月17日号

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マキタスポーツ

マキタスポーツ

マキタスポーツ/1970年、山梨県生まれ。俳優、著述家、ミュージシャンなど多彩な顔を持つ。子供4人。スポーツ用品店だった実家の屋号を芸名に。著書に『すべてのJ-POPはパクリである。』ほか。映画「苦役列車」でブルーリボン賞新人賞受賞。近刊に『越境芸人』(東京ニュース通信社)。『決定版 一億総ツッコミ時代』(講談社文庫)発売中。

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