さまざまなしがらみなどに阻まれ、会議の場が停滞しがちだという職場は少なくない。風穴を開けるために社外の手を借りようとする潜在的なニーズに議論メシは合致した。依頼はひっきりなしで、発足から1年余りでこれまで60回ほど実施した。

 東急電鉄とのディスカッションに参加した議論メシのメンバーは、空間デザイナー、経営コンサル、人事など本業の職種はさまざま。議論メシに依頼した理由を東急電鉄地域開発部の三渕卓(みぶちたく)さん(48)はこう話す。

「社内だと、社内の言葉だけで話してしまう。社外のメンバーがいることで、『それって、そもそもどうして?』という問いが出てきます。社内で成立していたロジックを見直し、思考プロセスを崩すことができるんです」

 2時間のディスカッションでは介護教育の人材育成など、単なる「街づくり」の枠を超えた視点も飛び出した。東急電鉄側の出席者からは、

「社外の人と雑談する機会は少ない。普段考えもしなかった視点からアイデアをもらえた」
「AとBの組み合わせがイノベーション。僕らが持っていない『B』を社外の人が持っている」

 と好評だった。議論メシが既存の外部コンサルタントとは異なる点について、前出の黒田さんはこう説明する。

「コンサルする人・される人、と分かれてしまうと、議論にはなりにくい。フラットな関係性で話すからこそ、議論が発展するのです」

(編集部・作田裕史、高橋有紀)

AERA 2018年12月17日号より抜粋