国際寮を開設する大学が増えている。青山学院、国際基督教など、国際系の教育が充実している大学が設置している。「売り」は留学生との共生だ。19年春には、明治大学の和泉キャンパス内に国際混住寮「MGV(Meiji Global Village)」が誕生する。総定員は216人で、「学びの場」として位置づけられており、留学生と日本人学生がほぼ半々の割合で混在する予定。

 六つの個室がユニットになる構成はWISHと同様で共用施設も充実。特定の宗教を信仰する留学生に配慮し、「お祈り室」も設置した。日本文化体験、着物の着付け教室などのイベントも開催する予定だ。

 学生は卒業後、より国際化された社会で生きることになる。留学生と日常生活を送ることで、文化や価値観の違いを知ることは、貴重な経験になるはずだ。

 国際化する寮の一方で、図書館も様変わりしている。以前は咳払いをしても睨まれるような静寂な空間だったが、今では学生が共同で作業するワークショップルームを設けた、複合的な施設が主流になっている。

 17年に近畿大学の東大阪キャンパスに完成した「アカデミックシアター」は、さまざまなコンセプトがぎゅっと詰まった、新感覚の複合施設だ。1号館と3号館の外観は、木の柱が斜めに交差してダイヤ模様を作る斬新な設計。夜になって明かりがつくと、くっきりとダイヤが浮かび上がる。

 特筆すべきは、7万冊の本が近畿大独自のインデックスで区分された5号館のビブリオシアターだ。「編集工学」の創始者で、日本文化研究の第一人者でもある松岡正剛氏が「偶発的な本との出会いを体感する」などをコンセプトとして監修した。1階と2階の2層構造で、1階フロア「NOAH33」は宇宙から地球、芸術、歴史などのテーマに分かれた33の書架が並ぶ。街の本屋をイメージし、LEDライトで本を照らしたり、書見台を付けるなど展示に工夫を凝らす。書架の脇には長いデスクと椅子が配置されており、学生が本と親しむ仕掛けが随所に見られる。2階の「DONDEN」は漫画を中心に、新書・文庫によって29の書架で構成されている。第一歩としての漫画から新書、文庫と知の森へと進むイメージで構成されている。

 大学院で心理学を専攻する濱崎洋嗣さん(修士1年)は、ヘビーユーザー。

「つい本を手に取ってしまいたくなるような仕掛けがある。図書館のイメージを壊す、新しい概念の図書館ですね」

 学生のボランティアスタッフが滞在し「夜の図書館お泊まり企画」など、ユニークなイベントを催している。

 書架の合間には、ACTと呼ばれるガラス張りの個室が42部屋点在し、さながら迷路のようだ。グループ学習に利用されるほか、ワークショップやイベントが開催されることも。プロジェクトの拠点にもなっており、衛星を使った天然マグロの生態調査などが進行中だ。

 アカデミックシアターには、ほかにも24時間利用できる自習室、インターナショナルスタディーズエリア、実学ホールなどが併設されている。ガラス戸を開けると中と外が一体となり、学園祭のコンサート会場になる。

「ここに集まってきた学生が、学部の垣根を越えて一緒に行動を起こす。アカデミックシアターはそういう場所なのです」(岡友美子・アカデミックシアター事務室長)

(ライター・柿崎明子)

AERA 2018年11月5日号より抜粋