過去に物議をかもした新閣僚の主な発言(2018年10月22日号より)(写真:(c)朝日新聞社)
過去に物議をかもした新閣僚の主な発言(2018年10月22日号より)(写真:(c)朝日新聞社)

 安倍政権がこのほど組閣した新内閣を支えるのは、その多くが「日本会議」所属の議員だ。有識者の中には、このことが日本の教育に大きく影響すると警鐘を鳴らす人もいる。

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 2012年の第2次安倍政権発足以降、閣僚のうち憲法改正を掲げる団体「日本会議」の国会議員懇談会に所属する議員は常に半数を超え、新内閣では20人のうち15人が、日本会議系議員だ。初入閣の閣僚に絞れば、12人中9人。改憲シフトの「日本会議内閣」とも言えよう。安倍晋三首相、麻生太郎財務相は日本会議国会議員懇談会の特別顧問を務め、菅義偉官房長官は副会長に就いている。

『日本会議の全貌』(花伝社)などの著書がある「子どもと教科書全国ネット21」代表委員の俵義文氏は話す。

自民党幹部が所属していることもあり、思想信条とは関係なく所属する議員は多い。懇談会は超党派の議連だが、9割は自民党で、その数は衆参合わせて約300人に達します」

 日本会議は1997年、有力な右派団体として知られた「日本を守る国民会議」と「日本を守る会」が統合して発足。新憲法制定を掲げ、「国の伝統」を重視する。伝統とは特に明治維新から戦前までを指し、戦後の日本に関しては、<経済的繁栄の陰で、かつて先人が培い伝えてきた伝統文化は軽んじられ、光輝ある歴史は忘れ去られまた汚辱され、国を守り社会公共に尽くす気概は失われ、ひたすら己の保身と愉楽だけを求める風潮が社会に蔓延し、今や国家の溶解へと向いつつある>(設立宣言から一部抜粋)とする。

 俵氏は警鐘を鳴らす。

「日本会議は単なる政治団体ではありません。理念や思想を支持する国会議連と連携をとり、特に安倍政権以降、着実に政策として具現化しています」

 日本会議が憲法改正とともに力を入れてきたのが、第1次安倍政権(06~07年)でも推し進められた「教育再生」だ。なかでも道徳の教科化はこのときからの悲願で、教育基本法の改正を経て、今年から小学校で、来年から中学校で実施となった。『危ない「道徳教科書」』(宝島社)を緊急出版した元文科官僚の寺脇研氏はこう危機感を話す。

「自民党は12年に発表した改憲草案では、人権は生まれながらに与えられるとする天賦人権説を西欧由来として否定している」

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