斜面の崩壊が集中した厚真町。厚く積もる火山灰の層が同時多発的に崩れたとみられる (c)朝日新聞社
斜面の崩壊が集中した厚真町。厚く積もる火山灰の層が同時多発的に崩れたとみられる (c)朝日新聞社
厚真町で起きた土砂崩れのイメージ(AERA 2018年9月24日号より)
厚真町で起きた土砂崩れのイメージ(AERA 2018年9月24日号より)

 北海道で観測史上初めて震度7を記録した、北海道胆振地方を震源とする地震。震源に近く広範囲で斜面が崩れた厚真町では36人が犠牲になった。震源から約50キロ離れた札幌市では、住宅地で液状化の被害が出たり、地下鉄沿線の道路が陥没したりした。住民生活への影響は続く。

 今回の地震はいわゆる「内陸直下型」だ。震源は深さ37キロと、この型としては深い。地震の規模を示すマグニチュード(M)は6.7。同じ型だと、活断層が動いて大規模な土砂災害が発生した2016年4月の本地震の本震(M7.3)などに比べて規模も小さい。だが震度7に達し、厚真町では専門家が「過去に例がない規模」と驚く土砂災害に見舞われた。

 要因の一つが揺れの強さだ。政府の地震調査委員会の平田直(なおし)委員長(東京大学教授)は9月11日の会見で、「破壊が開始した震源は深かったが、破壊が(地表に向かって)浅いほうに伝わり、地下15キロ地点に達した。このため強い揺れになった可能性がある」と指摘。厚真町の隣の安平(あびら)町では、平田さんによると「過去最高ではないが、非常に大きい」1796ガル(揺れの勢いを示す加速度)を記録した。

 もう一つが地盤の特徴だ。一帯には、厚真町の西約45キロに位置する支笏(しこつ)カルデラなどからの軽石を中心とした火山灰層が数メートルの厚さで積もる。現場を調査した北見工業大学の川尻峻三助教によると、崩壊は表層だけでなく比較的深いものや土石流のような跡もあり、「メカニズムは非常に複雑」と言う。ただ、いずれも火山灰層が悪さをしたらしい。「同じような地形の場所に同じ火山灰が広く積もり、強い揺れで同時多発的に崩れたのでは」とみる。

 札幌市内も地盤被害に見舞われた。北海道大学の石川達也教授らによると、清田区の住宅地では3地区が液状化の被害に遭った。いずれも谷を盛り土で埋めた造成地。うち2地区は、札幌が震度4だった03年の十勝沖地震でも被災したが、残り1地区はこのとき被害はなかった。石川さんは「03年より震源が近く、地震動も大きい。隣接する北広島市での加速度は03年が66ガル。今回は199ガルだった」。

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