ただ、沖縄の学会員の大半は党本部の方針に従順だという。

「反論するのはごく一部。孤立させられるのが怖いという人もいます」(仲宗根さん)

 別の70代の男性学会員はこう打ち明ける。

「婦人部は9割方が中央の意向を心から信じており、男性は党方針に同調する人と、納得はできないがやむを得ないという人が半々という感じです」

 この男性は「私見」と断った上で、前回知事選で翁長知事が訴えた「イデオロギーよりアイデンティティー」という考え方に共鳴した人は、学会の中にも多数いたとみる。

 男性もその一人。今回の知事選も前回に続き「オール沖縄」が推す候補に投票する、と打ち明ける。だが「翁長後継」の玉城デニー氏(58)の苦戦は否めないとみる。

「前回選挙で翁長知事に投票した人が佐喜真氏に回ると、前回の倍の票数となって効果が反映されてしまいます」

 7万票超ともいわれる公明票の行方が、知事選を左右するのは間違いない。

 公明党の「変節」に、かつての重鎮も疑問の声を上げる。

「公明党は隠していた『辺野古移設賛成』があぶり出された。沖縄創価学会は会員を守りたかったら自主投票にすべきだ」

 9月1日にSNSでこんなメッセージを流したのは、公明党副委員長などを歴任した元衆院議員の二見伸明氏(83)だ。地元の茨城県から、居ても立ってもいられず発信した。

「地元の本音は辺野古反対。学会関係者が大挙して沖縄に押し寄せ、沖縄の選挙に介入するのはもうやめろと言いたい」

 二見氏は言う。

「知事選は、沖縄の学会員次第で接戦になる。党本部の言いなりになると、子々孫々まで悔いを残すことになる」

(編集部・渡辺豪)

AERA 2018年9月17日号

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渡辺豪

渡辺豪

ニュース週刊誌『AERA』記者。毎日新聞、沖縄タイムス記者を経てフリー。著書に『「アメとムチ」の構図~普天間移設の内幕~』(第14回平和・協同ジャーナリスト基金奨励賞)、『波よ鎮まれ~尖閣への視座~』(第13回石橋湛山記念早稲田ジャーナリズム大賞)など。毎日新聞で「沖縄論壇時評」を連載中(2017年~)。沖縄論考サイトOKIRON/オキロンのコア・エディター。沖縄以外のことも幅広く取材・執筆します。

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