奥田知志(おくだ・ともし)/1963年生まれ。牧師。北九州市を拠点に活動。困窮者支援の全国組織の共同代表(撮影/タカオカ邦彦)
奥田知志(おくだ・ともし)/1963年生まれ。牧師。北九州市を拠点に活動。困窮者支援の全国組織の共同代表(撮影/タカオカ邦彦)
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 孤独になってはいけないのか? ホームレスや生活困窮状態など孤立する人を支援するNPO法人「抱樸(ほうぼく)」の奥田知志理事長(55)に聞いた。

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 活動を始めて30年。毎日いろんなことが起きます。当初は一喜一憂していましたが、最近は「そんなことぐらいある。人間やから」と(笑)。これが言えるようになったのは恵みです。問題を解決せずとも、つながること自体が大事だと思うから。

 孤独が問題になっていますが、時に孤独も必要ではないかと僕は思います。独りでいられない人が誰かと一緒にいることを求めると依存的になる。主体性が脆弱だからです。人は誰かと一緒にいるからこそ、独りになれる。一方、誰ともつながれないまま独りになってしまうのが「孤立」。誰かとつながることと独りになることは一対なのです。

 社会が無縁化した背景に自己責任論があります。個人や身内に責任を押し付けることで、社会の責任が曖昧にされてきた。他人とかかわることは、多少なりともリスクを負います。だから「かかわらないことが安全」と多くの人が考える。その結果、セーフティーネットに穴が開き、危険な社会となりました。社会とはそもそも人が健全に傷つくための仕組みだ、と僕は考えます。「絆(きずな)」は「傷(きず)」を含む。

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