故人の好きだった場所を事前にGPSで登録。その場所を訪れると、スマホの画面上に故人の写真や動画が出現。あらかじめ用意した言葉までかけてくれる(写真:良心石材提供)
故人の好きだった場所を事前にGPSで登録。その場所を訪れると、スマホの画面上に故人の写真や動画が出現。あらかじめ用意した言葉までかけてくれる(写真:良心石材提供)

 目まぐるしいIT技術の進化を考えれば、ロボット導師がお経を唱えたり、お墓をスマホの中につくることに対して異を唱えるのはナンセンス。むしろ、血縁、地縁関係が希薄になった現代社会においては、リアルなお墓自体がもはや時代遅れかもしれない? 最新事情を取材した。

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 スマートフォンの中にバーチャルなお墓を建てるサービスも現れた。名付けて「スマ墓」。

 異色のサービスを提供しているのは、関東圏で墓石業を営む良心石材社長の香取良幸さん。

「日頃、墓石をご購入いただいたお客様のご要望で一番多いのは、価格を抑えた最低限のお墓が欲しいというものでした。墓地や墓石にお金をかけられない方、墓石自体に必要性を感じない方が増えてきたこともあり、それなら、AR(拡張現実)の技術を駆使するのはどうかと。リアルな墓石はなくとも、スマホの中にお墓を建てて故人を弔うことも十分可能なのでは、と思い、試験的に始めました」

 サービスの料金は月額500円と極めてリーズナブル。利用方法は、故人が慣れ親しんだ実家や近所の公園、樹木葬や海洋散骨を行った場所をGPS(全地球測位システム)に登録するだけ。すると、その場所を訪れた遺族のスマホに、あらかじめ登録した故人の写真や動画メッセージが映し出されるのが「スマ墓」サービスの中身だ。

「肝心の遺骨については、最大15年間、弊社が責任を持って保管します。そのため、お墓を建てる資金や場所を確保するまでの一時的な利用もOKです」

 死後の世界はある意味、バーチャルなものと割り切れば、若年層を中心に受け入れられるサービスかもしれない。(経済ジャーナリスト・安住拓哉)

AERA 2018年8月13-20日合併号

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中島晶子

中島晶子

ニュース週刊誌「AERA」編集者。アエラ増刊「AERA Money」も担当。投資信託、株、外貨、住宅ローン、保険、税金などマネー関連記事を20年以上編集。NISA、iDeCoは制度開始当初から取材。月刊マネー誌編集部を経て現職

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