●在留期間を区切ることで、「移民政策をとると考えない」

 日本語学校同士もバラバラだ。かつて日本語学校の審査・認定は日本語教育振興協会(日振協)が行ったが、民主党政権時の事業仕分けで許認可権が法務省に移った。日振協の佐藤次郎理事長はこう話す。

「認定した学校を3年ごとに再審査する制度まで廃止されるなど、チェック機能が弱まった。現在、日振協に加盟する教育機関は法務省が告示した学校の半分に満たない。新設校と学校運営のノウハウなどを共有する場所もなくなり、横の連携が切れた」

 もっとも、日本語学校と書いてきたが、各種学校の分類に入る「私塾」に過ぎず、補助金をもらっているわけでもない。仮に一部の国の学生が取れなくなれば、出稼ぎだけが目的だと分かっていても、他の学生を入学させて経営を安定させようとするのが世の常だ。そもそも、零細企業が多い日本語学校に、外国人の受け入れを丸投げしてきたことがおかしい。国と地方自治体に責務があると初めて明記した「日本語教育推進基本法」の成立を目指す、超党派の「日本語教育推進議員連盟」会長代行の中川正春元文部科学相は、

「安倍政権は移民という言葉自体を認めず、外国人を労働力としか思っていない。好き嫌いにかかわらず、外国人は日本に入ってくる。外国人を受け入れる社会基盤の準備が必要だ」

 その上で日本語学校について、

「出稼ぎ目的でくる人、進学を目指す人、日本語学校への留学目的がいろいろ。類型化が必要だ」

 と語る。安倍首相は6月に決定した「骨太の方針」で外国人労働者の受け入れに大きく舵を切ったが、在留期間を区切ることなどから「移民政策をとる考えはない」と明言している。一方、国連が定義する移民は「通常の居住地以外の国に移って少なくとも12カ月以上居住する人」とあり、増え続ける外国人留学生もこれに該当する。

「安倍さんを強固に支持する右側の支持者の手前、移民とは言えない」(閣僚経験者)

 ここにも不都合な真実があるようだ。(編集部・澤田晃宏)

AERA 2018年8月6日号