●7割は借金を背負って来日、富裕層は英語圏を選ぶ

 人手不足はもはや全国的な問題だが、日本語学校は13年の467校から17年の643校にまで増加。留学ビザを取得した外国人は同期間で約19万人から約31万人に増えた。なぜか。

 そこに、留学ビザの資格外活動として認められている週28時間のアルバイトがあることは間違いない。

 ベトナムの首都ハノイにある日本語学校を経営するベトナム人男性に接触した。日本国内のベトナム人数は12年に比べ約5倍と他国を圧倒している。ハノイには現在、日本語留学ブームで350校ほどの日本語学校があるという。男性は「ベトナム人が日本に留学に行く目的は仕事」と断言し、こう続けた。

「2、3年前までは日本に行けば月30万、40万円稼げるなどと煽って、借金をさせてでも留学生をとにかく送るブローカーが多かった。日本の日本語学校から1人当たり約10万円のコミッション(紹介料)をもらえるからね。だけど、田舎の若者でもスマートフォンを持つ時代。今はSNSですぐに留学生からの生の情報が出回り、うそはばれる。留学ビザでは週28時間しか働けないこともわかっている」

 週28時間、金額にすると月10万円ほど。それでも、日本への留学を希望する若者は後を絶たない。

「ベトナムは大卒の初任給が日本円で月3万円弱。30万円は稼げなくても、まだまだ魅力はある。週28時間を超えて働く人がいることも知っている」

 日本を目指すのは、

「高校を卒業した、地元で仕事がない若者が大半です。7割は借金を背負って留学に行く。富裕層はカナダやオーストラリアなど英語圏へ留学します」

 留学ビザを取得するには銀行の残高や親の収入を証明する書類が必要だ。あくまで「留学ビザ」で、働くことは前提としていない。

「親の職業は農民だけど銀行員と書く。銀行員にわいろを渡し、入国管理局からの電話に対応するよう伝えておく。そうしたことがまだまだまかり通る。書類も、いくらでも偽造できる」

 ベトナム同様に日本への留学生が増えるネパールの日本語学校関係者からは、こんなエピソードを聞いた。

「日本から技能実習を拡大するというニュースが流れた瞬間、日本語学校から学生も入学希望者も消えた。技能実習制度であれば、日本語学習や渡航の費用を自分で負担しなくてすむ。要は、誰も日本語を勉強したいわけじゃなく、日本で働くことが目的なんです」

 取得するのは留学ビザでも、目的は出稼ぎ。学校側も授業料が入るのだからと、それを「黙認する」と語るのは、都内の日本語学校幹部だ。

「日本政府は08年、『留学生30万人計画』をぶち上げ、さらには11年の東日本大震災で多くの留学生が国に帰っていったため、入国しやすくなったと考えている関係者も多い」

 政府としても計画に近づくなら出稼ぎ目的でも多少は目をつぶるということなのか。この「不都合な真実」への甘えに深刻な人材不足が拍車をかける。

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