●留学ビザで単純労働に従事、温泉街の宿で正社員に

 ベテラン日本語教師の女性は今年に入り、日本語学校を新設しようとする四つの団体から電話を受けた。

「二つは病院関係で、残る二つは介護施設でした。話を聞くと、日本語学校を入り口にして外国人留学生を集め、労働力として使いたいだけでした」

 必要なのは単純労働。だけど、そんなビザはないから、留学ビザで来日してもらう。人材派遣会社や建設会社などが母体の新設校のなかにはそんな思惑のケースも少なくない。日本語学校には運送会社の仕分けバイトの募集広告が必ず貼ってある。コンビニで外国人を見ることも珍しくなくなった。コンビニ弁当の工場やホテルのベッドメイキングなど、もはや単純労働は外国人なしでは成り立たないという。

 7月、記者は前出のおもてなし専門学校の学生たちが通うアルバイト先を訪ねた。群馬県内のクリーニング工場では、インドネシア人のイマニュエルさん(22)が洗濯物の仕分け作業をしていた。平日4時間、土曜日8時間と週28時間働く。同社のスタッフは、「同じ条件で求人を出していたが、日本人がとれなくなった。今は留学生がいなければ仕事が止まります」。

 群馬を代表する温泉街である伊香保温泉の晴観荘(渋川市)では、おかみの茶木(ちゃき)万友美さんに話を聞いた。

「人手が足りなくなったら、もうハローワークではなく、日本語学校に電話します。3、4年前くらいから、ハローワークに求人を出しても人がこない」

 同旅館の従業員はアルバイトを含め18人。6人が留学生で、そのうち3人は正社員になった。日本人と差はつけず、基本給は17万円にした。

「まだ言葉の問題はありますが、仕事ぶりが一生懸命なので。お客さまからクレームが来ることはありません。将来的には幹部になってほしい」

 おもてなし専門学校が新しくキャンパスを開いた人口約3800人の高山村(群馬県吾妻郡)にも足を延ばした。後藤幸三村長は村の活性化に期待を示す一方、「学生に十分なアルバイト代を与えられるかどうか。村の農家と話し合いを続けている」と不安を見せた。同村の牛舎を訪ねると、スリランカ人のラディさん(28)が搾乳作業のアルバイトをしていた。こうした仕事も外国人留学生に支えられている。

 留学生たちも支えているばかりではない。週28時間の上限を無視して働き、学校は寝るためにくるという学生もいる。新設校のなかには「学生が入れば後は知らない」というところもある。

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