【教養主義の伝統を守る】小石川中等教育学校/大学並みの最先端の科学設備を活用し、生徒全員が課題研究に取り組む。研究機関や大学の教員が学校を訪れて指導にあたっている(撮影/ライター・柿崎明子)
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【教養主義の伝統を守る】小石川中等教育学校/大学並みの最先端の科学設備を活用し、生徒全員が課題研究に取り組む。研究機関や大学の教員が学校を訪れて指導にあたっている(撮影/ライター・柿崎明子)
都内公立中高一貫校の難関大合格者数(AERA 2018年7月16日号より)
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都内公立中高一貫校の難関大合格者数(AERA 2018年7月16日号より)
【伝統文化を教育に導入】白鴎高・附属中/都内初の公立中高一貫教育校。「日本文化概論」を学校科目に設定。音楽では三味線の授業も。地域と連携し日本の伝統文化を学ぶ(撮影/ライター・柿崎明子)
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【伝統文化を教育に導入】白鴎高・附属中/都内初の公立中高一貫教育校。「日本文化概論」を学校科目に設定。音楽では三味線の授業も。地域と連携し日本の伝統文化を学ぶ(撮影/ライター・柿崎明子)

「安くつく中高一貫」と注目を集めたが、進学実績では明暗も出始めた。専門家は「進学の結果にとらわれず、各校の教育内容で選ぶべきだ」と話す。

【グラフ】小石川が突出!あの有名校は…?17年と18年の都内公立中高一貫校の難関大合格者数はこちら

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 東京都初の公立中高一貫校として白鴎高校附属中学が設立されたのは、2005年。13年たった現在は、都立・区立あわせて都内に11校が開設されている。

 公立一貫校の登場は当時、画期的な改革として受け止められた。教育内容が手厚く、一般の公立中よりも主要教科の授業時間を多くし、少人数授業や独自教科を設定。大学進学に有利とされる6年間を見通したカリキュラムで、しかも学費は公立中と同じ。開設当初は入学倍率が10倍を超える爆発的な人気を呼んだ。現在は5~6倍と落ち着いているが、依然高倍率であることに変わりはない。

「第1号」の設立から13年たち、気になるのが各校の大学進学実績だ。
 17年と18年の都内公立中高一貫校の難関大学合格者数を見てみると、突出しているのが小石川中等教育学校だ。13~14年の東大合格者は5人前後だったが、ここ3年は10人超。栄光ゼミナール教務部教務企画課長の山中亨さんは言う。

「母体が伝統校だと、受験生の父母だけでなく祖父母の評価も高い。小石川を目指して優秀な生徒が集まるので、結果大学実績も上振れする傾向がある」

 都内の公立一貫校には、6年間一貫で編入のない「中等教育学校型」と、高校に附属中学を併設する「併設型」がある。一般的に「中等教育学校型」が大学入試に有利と言われ、小石川がその代表格だ。ほかに桜修館・立川国際・三鷹・南多摩・九段中等教育学校がそれにあたる。

 一方、併設型も健闘している。武蔵は18年、東大合格者が小石川中等教育学校の12人を抜いて、13人にのぼった。

 ただ、山中さんは、大学合格実績だけで志望校を判断するのは危険だと指摘する。 「都内の公立中高一貫校は、それぞれ特色のある教育を打ち出し、求める生徒像を明確にしています。小石川は理数教育に特化しており、武蔵も同じような傾向にある。理数系は大学入試と親和性が高いので、進路指導しやすい面もあります」

 日本の文化伝統教育をうたう白鴎高附属中は国際化も進めており、18年入試から、英検2級以上を対象とした「特別枠募集区分A」のかわりに「海外帰国・在京外国人生徒枠」を設置した。立川国際中等教育学校はこの先附属小学校を設置する予定で、都立初の小学校から高校までの一貫校として注目されている。

 大幅な制度変更の足音も聞こえ始めた。都内の公立中高一貫校は、中学入試は高倍率を維持しているが、高校の倍率は全日普通科高校の平均倍率を下回り、1倍以下という学校もある。

 そこで都の「都立中高一貫教育校検証委員会」は、中高一貫教育のメリットを生かすためには高校からの募集を停止し、中学の入学枠を拡大することが望ましいと提言した。将来的に、高校からの募集がなくなる可能性がある。都立中高一貫校設立以来の大改革だ。(ライター・柿崎明子)

AERA 2018年7月16日号より抜粋