17年1月に鹿島からスペイン2部のテネリフェへ移籍すると、翌シーズンには同1部のヘタフェへステップアップ。柴崎は、スペインでの1年半の経験が自身を成長させてくれたとしている。

 長短織り交ぜたパスで攻撃に緩急をつけ、中盤をコントロール。セネガル戦の乾のゴールを生み出した長友へのロングフィードやベルギー戦で原口元気の先制ゴールを呼び込んだスルーパスをはじめ、ロシアW杯での日本の得点機の多くは柴崎を経由したものだった。これまで苦手とされていた守備面でも出足の鋭いインターセプトが光り、時に体を張って相手を止めるなど一皮むけたプレーが目についた。

 かつては寡黙なイメージが強かったが、今大会では積極的にメディアに対応する姿も印象的で、ベルギー戦後には素直な心境を吐露していた。

「個人のパフォーマンスとしては、よくも悪くもいまの実力をそのまま出せたと思っています。そこに関しては、いい意味でやり残したことはない。もちろん、もっとこうしておけば良かったとか、もっとこういう部分があればと思うことはありますけれど、それは今後の成長のための材料として取っておきたい」

 100%の実力を出しながらもベスト16で敗退したことは悔しいが、受け入れる必要がある。そして、チームに対しても冷静にこう分析した。

「大枠でいえば、日本のチームとしての形を出せましたし、攻撃面ではポジティブな要素がありました。その半面、守備ではやはり4試合連続で失点し、終わってみれば10人のコロンビアにしか勝てなかったという現実もあります。もちろん、チームとしては準備期間がもっとあれば、さらによくなっていたと思っていますけど……」

 元々パスセンスやゲームメイクには非凡なものがあったが、W杯が柴崎をさらに上のステージへ押し上げたともいえる。

 本田圭佑、長谷部らが代表から退く意向を表明し、世代交代が進むだろう日本代表において、殻を破った司令塔・柴崎こそ、次代のリーダー候補の一人かもしれない。(スポーツライター・栗原正夫)

AERA 2018年7月16日号