シェフ 権守里佳さん(31)[AERA 2018年7月2日号より、撮影:写真部・小原雄輝]
シェフ 権守里佳さん(31)[AERA 2018年7月2日号より、撮影:写真部・小原雄輝]

 フリーランスといえば、収入が不安定、デザイナーやエンジニアなどに多いイメージを持ちがちだが、最近ではそんな常識を覆す新型フリーランスが増えている。店舗を持たないフリーランスシェフという働き方を選んだ女性もその一人だ。

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 モノやサービス、そして空間を多くの人で共有するシェアリングエコノミーの潮流もフリーランスを後押しする。

 会場に入ってきた社員たちから「わー」と歓声があがった。

「ほっとする瞬間です」と笑顔を見せるのは、シェフの権守(ごんのかみ)里佳さん(31)。6月某日、ある大手企業の表彰パーティーでのひとコマだ。まさに「インスタ映え」なフィンガーフードの数々は、彼女の手によるもの。

 店舗を持たないフリーランスのケータリング専門シェフとして、権守さんは昨年12月に開業したばかりだ。それまでは20歳の頃から10年間、母が経営するダイニングバーの店長兼シェフとして働いていた。

 地元の食材を使った野菜料理を売りにしていたが、集客は常に苦労した。9時からランチの仕込みが始まり、閉店は24時。80席の店を回すために7人のスタッフのシフト管理もしなければならない。休みは週1日で、10年間で長期休暇は3泊4日の沖縄旅行が一度きり。

「料理の修業とお客様への対応など今につながる勉強はできましたが、時間も場所も店舗に拘束された10年間はとても過酷なものでした」

 権守さんはそう振り返る。

 厳しい飲食業界はブラックな働き方になりがち。将来について母親と話し合った末、ケータリングに特化すると決め、店を畳んだ。

 現在の権守さんの働き方を可能にしているのが、料理人と企業の間の橋渡しをする「グリーンダイニング」(グラアティア社)というプラットフォームだ。企業から社内パーティーなどの依頼を受けると、同社の担当者が要望をヒアリングし、適任と思われるシェフにつなぐ。

 権守さんの場合、インスタ(rikaskitchen47)に料理写真をアップしていたのが担当者の目に留まり、請け負うように。月40万~100万円の売り上げの半分ほどがグリーンダイニング経由の仕事だ。

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