それからは、毎日同じ時間に同じ病院へ通って、血液をサラサラにする注射を打ちました。身重の体で毎日注射に通うのは大変ではありましたが、この注射が赤ちゃんの命を生かしてくれていると思うと、全くつらいとは思いませんでした。

 妊娠後期になると、抗リン脂質抗体症候群にかかった人の半数が合併する「全身性エリテマトーデス」を発症し、手が腫れて痛みが出てきました。胎内の環境も悪化してしまったため、出産予定日より1カ月早く、帝王切開で出産。麻酔から覚めて娘と対面したとき、自然と涙がこぼれてきて、生まれてきてくれてありがとう、やっとママになれた、と思いました。嬉しかったけれど、ホッとした気持ちのほうが大きかったですね。

 息子を生きたまま産んであげられなかったことは今でも悲しいし、申し訳なく思っています。しかし息子は、命懸けで私に病気のことを教えてくれて、私と娘を助けてくれました。そして、私のホームページを見て自分の病気を知った方の赤ちゃんも救ってくれた。本当に感謝しています。そんな息子を誇りに思っています。

(構成/編集部・深澤友紀)

※AERA 2018年4月2日号