長生きへの備えとして注目を集めるトンチン型年金保険。2016年の日本生命保険を皮切りに生保各社が新商品を発売している(撮影/写真部・片山菜緒子)
長生きへの備えとして注目を集めるトンチン型年金保険。2016年の日本生命保険を皮切りに生保各社が新商品を発売している(撮影/写真部・片山菜緒子)
トンチン型年金保険の仕組み(AERA 2018年4月2日号より)
トンチン型年金保険の仕組み(AERA 2018年4月2日号より)
主なトンチン型年金保険(AERA 2018年4月2日号より)
主なトンチン型年金保険(AERA 2018年4月2日号より)

 超長寿社会で心配なのは、やはり老後の生活費だ。資産運用はしていても、成果が予測できないだけに不安。保険会社が新しい商品の販売を始めている。

【図表で見る】トンチン型年金保険の仕組み

「トンチン」というトボけた名前の金融商品が売れているという。保険商品に詳しいファイナンシャルプランナー(FP)の深野康彦さんは、こう解説する。

「『トンチン型年金』は、早く死亡した人の受取額を減らし、長生きする人に回すことで長寿リスクに対応する年金保険です。本来の『トンチン』は死亡時の保障をゼロにする仕組みですが、掛け捨てを嫌う人が多い日本では死亡時の受取額を7割程度に設定し、『トンチン性の高い』商品として販売されています」

 この商品を開発したイタリア人、ロレンツォ・トンティの名前にちなんでこう呼ばれているという。日本では、日本生命保険が2016年4月に保険商品「グランエイジ」を発売、その後、第一生命保険やかんぽ生命保険、太陽生命保険などが追随した。

 日本生命商品開発部の大菅聡和課長補佐は、その経緯をこう話す。

「低金利で保険の予定利率が引き下げられ、既存商品の返戻率の維持が難しくなる中で、セカンドライフを充実させる商品を目指して検討を始めました。長生きできなければ元本割れする商品が受け入れられるかは心配でしたが、ふたを開ければ大変好評で、すでに5万4千件を超える契約をいただいています」

 トンチン型保険は加入できる年齢が決まっていて、同社の場合は50歳から87歳までだ。実際の契約者で最も多いのは50代で、全体の4割を占めるという。次に多いのが60代だ。加入する年齢が若いほど月々の支払いは小さくできることもあり、早めの加入を決断する人が多いそうだ。

 記者は40代で加入はできないが、試しに50歳で加入した場合の設計書をつくってもらった。50歳から70歳までの20年間、毎月6万2526円の払い込みを続ける。その期間に死亡あるいは解約すると、払い込んだ額を全額受け取ることはできず、返戻金は7割程度だ。

 しかし、70歳からは死ぬまで年間60万円の年金を受け取り続けることができる。払い込む総額は約1500万円で、受け取る年金がそこに達するのは94歳。

 それまでに死んでしまえば「払い損」だが、95歳まで生きればトクすることになる。ちなみに男性であれば月々約5万円の支払いでよく、総額1200万円ほどの支払いで同じ年金額を受け取れる。

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