ちなみに「グランエイジ」では、年金スタート時まで生存していればモトが取れる10年の確定年金も選ぶことができ、年金受け取りのタイミングで変更も可能だ。契約時には終身で受け取るプランにしていても、その後で長生きする自信がなくなったら、全額回収できるプランに変えることができる。

 それでもやはり、老後の資産をトンチン型年金に偏重させるのも危険だという。

「受け取る年金額が確定するため、インフレに弱い。ある程度インフレに対応する公的年金でも、物価上昇ほどには年金額が伸びないしくみになっているので、やはり株などのリスク投資と併用するのがおすすめです」(同)

 トンチン型年金は複数の保険会社が販売しており、それぞれ特徴は異なるが、18 年に入って新しいタイプの商品が登場した。日本より金利の高い外貨で運用することで、高い利率を実現できるというマスミューチュアル定額年金「ながいき年金プラン」だ。

「一時金としてまとまった金額を一括で払い込むしくみです。早くにお亡くなりになった場合でも、外貨ベースでの年金受取総額で元本割れしないのも特徴です」(マスミューチュアル生命保険・鈴木暁営業副本部長)

 仮に60歳(女性)で、退職金などを活用し10万米ドル(1060万円相当、1米ドル=106円の場合)を払い込んだ場合、その年から80歳まで毎年1028米ドル(同10万8968円)を受け取る。

 さらに、80歳以降は年金が増額され、1万1104米ドル(同117万7024円)を生涯受け取り続けるのだという。あくまで外貨建てではあるが、受け取る金額は87歳でモトが取れ、95歳で約2倍になる。為替変動リスクはあるものの、かなり魅力的な数字に見える。

 しかし、FPの深野さんはこう釘を刺す。

「トンチン型年金は将来受け取る額を確定できるのがメリットですが、外貨建ての商品は為替変動でその恩恵を享受できない点に注意する必要があります」

 たしかにこの10年をみても米ドル/円は4割以上動いており、為替変動を甘く見るのは禁物のようだ。

 いずれにしろ、長生き時代の資金対策はどれも一長一短がある。資金を増やすことが目的ならトンチン型年金は最適な商品とはいえないが、取り崩しが苦手な人や、逆に浪費しがちな人が長生きに備えたい場合は有力な選択肢になりそうだ。(ライター・森田悦子)

AERA 2018年4月2日号