17年9月に安倍政権は「人生100年時代構想会議」を設置。同年12月には、幼児教育、高等教育の無償化などの政策がまとめられた。『ライフ・シフト』は、長寿社会ではこれまでの「教育→仕事→引退」という一方通行の「3ステージ型」の人生は通用しなくなり、常に新たなスキルを習得しながら複数のキャリアを渡り歩く「マルチステージ型」の人生に移行すべきだ、と説く。同書によると、50%の確率で生存する年齢は、今20歳で102歳、40歳で98歳、60歳でも94歳。私たち「現役世代」も自身の想像以上に長寿化することを覚悟しておくべきだろう。

 とはいえ、「長く生きられること」と「長く生きたいか」は別問題だ。AERAが行ったアンケートでも、「100歳まで生きたいですか」との質問に約67%は「いいえ」と回答した。

「健康で生きるならいいが、いろんな疾患等を抱えてはつらい。100年生きたら、友人や家族に先立たれることが多くなりそう」(30歳女性・医療関係)
「生命維持だけの不自由な体で、介護で迷惑をかけたくない」(57歳女性・自営業)

 など、やはり健康面での不安が大きいようだ。また、

「経済的にインフレになって年金の価値が相対的に下がるかも」(83歳男性・無職)
「現在の負担で有料ホームを利用できるか分からない」(68歳女性・会社役員)

 と具体的な金銭面の不安を挙げる人も多かった。

 子どもがいる「現役世代」はさらに大変だ。前述した50%が107歳まで生きるとされる07年生まれの子どもは、今、小学校高学年。この世代の子を持つ親は30代後半から40代中盤が多く、自分たちの複数キャリアを模索しながら、100年生きる子どもの未来を見据えた教育もしなければならない。第一生命経済研究所主席研究員の宮木由貴子さんはこう語る。

「『団塊ジュニア世代』は、受験競争の激化、バブル崩壊後の就職難、非正規社員の増加、リーマン・ショックによる賃金抑制、共働き増加で追いつかない公的保育サービス、就労形態の変化……など人生の重要なステージで、上の世代の常識が通用しなくなる経験をし、多くの『逆風』を受けてきました。これからの生き方の転換のキー世代であるといえます」

(編集部・作田裕史)

AERA 2018年4月2日号より抜粋