なかなか契約が決まらなかっただけに、一時は日本球界復帰の臆測も出た。それは年齢が関係している。大リーグは近年、「40歳」が野手の一つの区切りになりつつある。14年はヤンキース元主将のデレク・ジーター、16年にはレッドソックスの元主砲デービッド・オルティスが40歳の年に引退した。7日現在、40代でメジャー契約を結ぶ野手はイチローしかいない。

 リーグ全体がデータ偏重になってきた点もある。それぞれの球団は各球場に設置された3次元的に撮影する高解像度カメラなどを駆使し、打撃から守備範囲、盗塁の速さ、技術など選手たちのプレーを数値化して分析している。実績あるベテランでも、同じ力量と判断されれば、若手に代えられる流れがある。

 マリナーズは09年、後に殿堂入りしたケン・グリフィーを呼び戻した。引退への花道をつくった格好で、事実グリフィーは10年を最後にユニホームを脱いだ。米野球殿堂入りが確実視されるイチローも同じ形なのか。

 ただ、イチローの考えは違う。「50歳まで現役」という目標に近づいたことに触れられると、「僕は『最低50歳まで』と言っているので、そこは誤解しないでほしい」と言い切った。

 代名詞でもある背番号「51」のユニホームを再び手渡されたイチロー。さまざまな記録を塗り替えてきたシアトルでの伝説の続きが、間もなく始まる。(朝日新聞スポーツ部・遠田寛生)

AERA 2018年3月19日号